吉本陽二、佐藤睦美、林剛彦 反射性交感性ジストロフィー 理学療法 2006;23(1):298-302
- 痛みの悪循環モデル
- 痛みが生じたときに現れる最も一般的な心理的反応は不安と抑うつである
- 続いて、痛みが長期化すると抑うつが生じ、四六時中痛みのことが頭から離れず心気傾向となる
- 医療従事者が痛みに対して疑いをもっていることを感知し、攻撃性が加わると医療に対する不信感や猜疑心が高まるといわれる
- 加えて、抑うつがあると意欲が低下し、活動量が減少することから痛みによって能力障害が生じるのではなく、痛みによる抑うつが身体活動を低下させ、能力障害を悪化させると考えられる
- 能力障害は不安や抑うつを増加させ、身体活動の低下は廃用性症候群を引き起こし、さらに痛みの増加につながり、悪循環が形成される
- このように、痛みは、身体面への影響だけでなく、精神面へも影響を及ぼし、長期の罹患によって身体面の問題と複雑に絡み合い、種々の問題が複雑化した状態を招く
- 慢性疼痛の患者は、他人に理解できない痛みを周囲に伝えるために、強い痛みの訴えや過度に苦しそうな表情、跛行などの「疼痛行動」を行う
- 行動療法では、疼痛行動を患者が示しても過度の反応をせず痛みに対して前向きな対処を行ったときに賞賛の反応を示し、疼痛行動の出現頻度を減少させることを目的とする
- 認知療法では、「痛みのためにーーーができない」とういう認知を、「痛くてもーーーができる」という認知に移行させることを目的として行われる
- Riley
- 慢性疼痛症例の痛みの軽減は困難であるが通常の生活に戻ることによって痛みを制御できる可能性がある
- また多くの慢性疼痛の患者は痛みがある状態では正常な生活はできないと信じている。
- 典型的な痛みを過剰に意識している患者が、正常な生活を送るだけで、魔法のように痛みが軽減する
- このことより、理学療法では日常生活動作の改善を目標とすることは、痛みの軽減にもつながり、生活の質の向上の達成できる
- 慢性疼痛を有する患者に対する理学療法の効果を大きく左右する要因として、「過度な我慢を伴わない意欲」を挙げることができる
浅井友詞 肩甲部痛(いわゆる肩こり)理学療法 2006;23(1):265-270-
- 肩甲骨が上肢を保持するためには、僧坊筋はじめ菱形筋と肩甲挙筋が主に働き、前方では烏口突起に付着する小胸筋が関与し、常にこれらの筋群にはストレスが加わっている。特に小胸筋の緊張が強い場合には、肩甲骨が上方へ引かれ、肩甲骨下角の突出が見られる
- 痛みは性格とも深く関与し、人格や行動の特徴は、1几帳面完全主義自己抑制などの過剰適応型 2痛みを訴え周りの気を引き嫌な状況を回避する回避疾病利得型、3自責感が痛みの形で現れる攻撃罪悪感型に分類される