臨床痛み学テキスト 5

第13章 運動と痛み

  • 低強度の等尺性収縮運動は、関節の安定性に関与する筋群の再教育と強化を目的に実施される。たとえば腰痛患者では多裂筋を、膝蓋大腿関節痛患者では、内側広筋を、それらの周囲筋とは別に個別に訓練できれば関節の安定性の回復につながる。
  • 腰痛の発生機序として、われわれは多裂筋などの障害により脊柱深部の筋の生理機能が障害されたためではないかと考えている。つまり中枢神経系に支配されているこれらの筋に障害がおこると、脊柱の安定やその保護といった正常の生理機能を発揮することは困難で、特定の運動ブログラムでその昨日を改善させる必要がある。
  • 超音波画像を用いた研究では急性腰痛患者の多裂筋横断面積は部分的に減少しているとされ、急性腰痛患者の多裂筋機能不全にかんする重要なエビデンスが示された。
  • 不動によって惹起される筋萎縮は、伸筋の方が屈筋よりも顕著であるが、これは伸筋のほうが屈筋よりタイブI線維の構成比率が高いことに関連している
  • 影響を及ぼしている筋の活動性やその運動を行えば、痛みを増強させている悪循環を断つことができる可能性がある
  • 筋力や筋持久力が低下している患者においては、廃用、あるいは萎縮を呈した筋を強化し、持久力を向上させることが必要である。
  • 多裂筋はタイプII線維よりもタイプI線維の割合が高く、タイプI線維の機能不全が慢性腰痛患者でみられたことを考慮すると、タイプI線維の昨日を維持するためにもリハビリテーションを早期に開始することは適切であるといえる。
  • タイプII線維よりもタイプI線維は廃用や痛み、反射抑制により顕著な変化が生じ、頻繁なリハビリテーションがひつようである。
  • 多裂筋 わたしの指を払いのけるように徐々にあなたの筋を盛り上げて下さい
  • 慢性腰痛が持続するメカニズムに多裂筋の横断面積の減少が関与していることが推察されている。