痛みと拘縮

沖田実、中野治郎、坂本淳也、横山真吾、近藤康隆、本田祐一郎、濱上陽平 痛みと拘縮 日本運動器疼痛研究会誌 2010;2:31-38

  • 組織損傷の有無にかかわらず、痛みが発生すると脊髄後角は過興奮状態となり、この影響で運動神経が刺激され、筋スパズムとよばれる筋収縮が惹起される。そしてこの状態が継続すると関節周囲軟部組織は不動状態に曝され、その結果拘縮と呼ばれる機能障害が発生する。また筋スパズムは一過性の筋収縮でなく持続的な筋収縮であるため、その発生は末梢組織の乏血を招き、これが継続すると新たな痛み物質の生成につながり、いわゆる痛みの悪循環が形成されることになる。
  • 最近の研究では関節の不動そのものが痛みの発生原因となり、神経系の可塑的変化を生来することも明らかになってきた
  • 拘縮とは関節周囲に存在する皮膚、骨格筋、腱、関節包、靭帯といった軟部組織が器質的に変化し、そららの伸張性が低下することでしょうじるROM制限をいうが、その発生進行には不動の影響が大きく関与している
  • 一ヶ月以内の不動で起こる拘縮は、骨格筋の変化に由来するところが大きく、拘縮の発生初期段階の責任病巣の中心は骨格筋にあるとかんがえることができる。
  • 拘縮発生時の骨格筋には筋長の短縮と伸張性低下が生起することはまぎれもない事実であるが、拘縮の進行には後者の影響が大きく、そのメカニズムを探ることが拘縮の病態解明につながると思われる。
  • 筋膜 筋上膜、筋周膜、筋内膜
    • 筋内膜は筋線維の収縮、弛緩、あるいは伸張に伴う筋線維の長さの変化に直接対応しなければならないために特に伸張性に富んでいる
    • 骨格筋の弛緩時は筋内膜を構成する多くのコラーゲン線維が筋線維の長軸方向に対して横走しているが、伸長時は多くのコラーゲン線維が縦走し、配列変化が生じることが示されている
    • タイプI,IIIコラーゲンが主で、前者は組織の硬度に、後者は組織の伸張性に関連するとされる
    • 筋内膜 たいぷIIIコラーゲンが多く、他の筋膜より伸張性に富む
    • 動物実験 不動4週で コラーゲン線維の配列変化 筋内膜を構成する個々のコラーゲン線維の可動性が減少―筋内膜の伸張性低下を示唆―筋性拘縮の一病態
    • 組織の硬度に関連があるタイプIコラーゲンは不動期間の延長にともなって増加していることから筋性拘縮の進行との関連が示唆される