牛田享宏、池本竜則、篠崎淳、田中茂樹、谷口慎一郎 痛みの脳機能イメージング研究 ペインクリニック 2006;27(12):1528-1536

  • 患者として痛みを受容する場合、痛みは単なる感覚という観点を超えて、実際には、さまざまな事象が融合した主観的な感覚情動体験として経験することになる。
  • 痛みの評価法はVAS,MPQ,SF-36等あるが、元来が主観的なものを評価しているため、再現性などの面を含めて問題点も多い
  • 神経因性疼痛患者におけるアロディニアと痛み関連脳活動
    • 被験者が経験している痛みをfMRIが捉えてることを示唆。一方視床の活動性が患者群で検出しにくいのは、疼痛の慢性化によって、脳が何らかの可塑的な変化を引き起こしていることを示唆
    • 帯状回は情動に関与
  • 神経因性疼痛患者にみられる自発痛と脳活動
    • 急性症例では、視床の活動性は痛みの病態を反映して亢進するが、慢性症例においては、対側の視床活動は痛みの強さに相関せず、かえって低下する
  • 神経因性疼痛患者における仮想疼痛体験と脳活動
    • 慢性の神経因性疼痛患者においては、繰り返される痛み体験の中で、実際に痛み刺激が局所へ加えられなくても、脳内で情動的な痛み経験を繰り返していることが示唆され、このことが患者の痛みを慢性化させている一因になっている可能性があるものと考えられる。
  • 運動器変性疾患による疼痛と脳活動
    • 慢性腰痛患者における痛みは、臨床的にもより複雑な構図をとることが多い。これは慢性的な腰痛が前述の急性痛の要素に加えて、しばしば、事故、仕事、収入など社会背景をもつことにも少なからず関係しているものと思われる。その意味で、慢性腰痛患者の痛みに脳イメージング法で取り組んでいくことは意義が大きいと考えられる。
  • 個々の痛み患者の評価法としてのfMRIの意義付け
    • fMRIの再現性と信頼性
    • その日の状況などに応じて、情動、記憶、意識などが変わってくるため、再現性を得にくい