難治性疼痛に対する神経リハビリテーション治療

穂積淳、大住倫弘、緒方徹、住谷昌彦 難治性疼痛に対する神経リハビリテーション治療 麻酔 2015;64:734-740

  • 四肢切断後の幻肢痛患者を対象とした脳機能画像研究からは、大脳/脊髄上位中枢レベルでの機能再構築(reorganization)が神経障害性疼痛の発症基盤として中心的な役割を果たしていることが明らかになっている
  • S1/M1機能再構築が神経障害性疼痛の発症基盤となっていることも示唆される
  • 心的手表象回転課題と呼ばれる神経物理学的研究手法
  • 頭頂葉後部の活性化ーこの領域は自己身体の所属感(body ownership)とも関連する領域
  • 神経障害性疼痛患者では頭頂葉後部の機能障害が示唆される
  • 幻肢のテレスコーピング現象は、S1/M1での体部位再現地図の縮小/拡大と相関している
  • 自己身体部位のそれぞれについて知覚―運動ループが整合されている状態では、ヒトはその身体部位を自分の体の一部と認知できる
  • 言い換えると、ある身体部位に関して知覚ー運動ループの整合性が破綻した場合には、ヒトはその身体部位を自分の身体の一部であると認知できない
  • 自己身体認知に関わる知覚ー運動ループは体制感覚だけでなく多感覚情報を統合して制御されており、中でも視覚情報がもっとも重要である
  • このような身体部位認知における視覚情報の優位性を利用して、健常者上肢の視覚的な運動感覚と体性感覚的な運動感覚を解離させて上肢の知覚ー運動ループを破綻させると、病的疼痛や手の喪失感をはじめとする異常感覚が生じることが報告されている
  • この現象は、“痛み”とはそもそも身体の異常を知らせるための警告信号であるという観点から、生理的には知覚ー運動ループの整合性が保たれるべき状態で、それが破綻するとその異常(破綻)に対する警告として”痛み”が中枢神経系で起こる(認知される)、というように解釈される。
  • 鏡療法の治療機序は、切断肢が運動しているような鏡からの資格情報は、四肢切断に起因する自己受容感覚の欠損を大小して中枢神経系に運動感覚をフィードバックし、その結果切断肢の知覚ー運動ループが再統合され病的痛みが緩和すると考えられる
  • 視覚情報に加え、神経障害による運動不全を呈する患肢を受動的に運動させることによって体性感覚情報も同時に入力するリハビリロボットスーツを共同開発中である