土井永史、鮫島達夫 身体表現性障害 診断と治療 2011;99(6):959-963
- 身体表現性障害は、精神的苦悩と疾患行動が変容し肥大したものと記述できる
- 一般に未熟で依存傾向の強い人や自己顕示欲の強い人、不安が強い人の場合には、他者に対する身体症状の訴えが増強する
- 完全主義的傾向の強い人の場合には、身体症状の完全な除去を求めて疾患行動は執拗になるであろう
- 統合失調症で慢性的な電波体験をもつ症例では、末期胃癌の疼痛を「痛み」としてではなく、「腹部への電波の増強」として訴えることがある
- 慢性的ストレスは、緊張と深睡眠(stage IIIとstage IVの睡眠)の減少を介して筋膜性疼痛や倦怠感を誘発しうる
- 失感情言語症(Alexthymia,自分の感情を言語で適切に表現できない病態)のある症例では、ストレスは身体症状として表現される。これが身体化である
- 長年身体表現性障害として治療されてきた症例のなかに、身体的原因が見落とされてきた症例や心気妄想や体感幻覚を伴う統合失調症・うつ病の症例が混在していることがある。
- 検査結果の説明
- 「少なくとも悪性・進行性の疾患は考えなくても良いこと」を明確に伝えることである
- 身体表現性障害の症例では”疾患”を否定されてしまうと、患者は自分の存在を否定されたような気持ちを抱き、「主治医は疾患を発見できずにるだけ」と解釈するであろう
- この場合には、詳しい検査で異常が認められなくても”身体疾患”の存在は否定せず、上記と伝えるに止め、患者の現在の苦痛に共感を示すことが大切である
- 紹介に際しいかに説明するか
- 「身体が不調だと心も不調になるが、心が滅入ると身体も滅入る」ということを指摘し、不眠・不安などに対する専門的な治療も並行して行う必要があることを指摘するのがよい
- いつ、どのように治療を終了するか
- 「もう大丈夫のようにも見えるが、経過をみるため、一応次回の予約を入れておきましょう。ご都合などで予定の変更があればご連絡ください」と伝えるに止めるのがよい
- 一言で要約するとすれば、"身体疾患とうつ病・統合失調症などの内因性精神病とを除外した後に、認知行動療法的手法を落ちいて、忍耐強く患者と付き合う”ということになるであろう