宮岡等、宮地英雄 慢性痛の心理社会的特徴 Practice of pain management 2011;2(2):102-104
- 心気傾向の強い症例
- 身体愁訴を訴えるがそれに見合うだけの身体所見がない場合、精神医学ではその身体愁訴を心気症状と呼ぶ
- 身体化の医師の対応としては
- 身体所見を性格に説明する
- 過度の身体面への検査や治療を実施しない
- 身体に異常所見がないことを伝え続けながら経過をみる
- 憂うつ感をともなう症例
- 疾病利得が疑われる症例
- 薬物依存の傾向を有する症例
- 医原性の問題の関与が疑われる症例
- 「難治性疼痛では、まず身体面の原因を徹底的に取り除く」という医師の姿勢である。実際の臨床では「身体に原因となる異常はないと断定しきれないが、明らかな異常があるともいえない」と考えられる症例に対して外科的治療が実施され、改善しないとの理由で精神科に依頼される場合がこれにあたる
- 精神科の立場から言えば、「他覚的な身体病変があるとしてもそれがすべての自覚症状を説明するものでない可能性があれば、緊急性のない身体面の治療は急がなくてもよいのではないか」と、身体医に働きかけたい
- 身体疾患と考えやすい病名を告知されている症例
- 線維筋痛症や顎関節症では、明らかな身体病変が見いだせない場合でも診断されうることが、一般の医師が参照する診断基準に記載されていることがある。脳脊髄減少症、化学物質過敏症、慢性疲労症候群、更年期障害
- 患者は精神疾患よりは身体疾患の病名を受け入れやすいためか、身体科の医師もつい「身体疾患的な響きを持つ病名」を告知しやすいようである。しかし、このような病名が告知された後で痛みが難治であるとの理由で精神科に紹介され、精神科医が精神面に対する治療の必要性を説明した時、患者は「いままで聞かされてきた説明と違う。これまでの診断や治療は正しかったのか」という疑問を抱きやすい。またいったん身体疾患であるかのような病名を告知されると、その後の精神面に対する治療は難しくなる。このような病名の告知がその後の治療に及ぼす影響について、痛みに治療にあたる医師には十分に配慮して欲しい。
- 精神疾患治療中に痛みを訴える症例
- 「痛みの原因は現時点ではみつからないし、この検査でみつかっていないということは心配なものである可能性はほとんどない。現時点で治療できるのは精神症状なので、まずそちらの治療を中心にしたい」のような説明が適切である。