ペインクリニック的手法が心身医療のチャンスに:慢性痛患者の変化を

田村真 ペインクリニック的手法が心身医療のチャンスに:慢性痛患者の変化をともに喜ぶ治療者としての体験から ペインクリニック 34(12):1697-1703

  • うつ病を患われた精神科医の「うつ病になってみてみて一番辛かったのは、誰もわかってくれなかったことだ」という助言から得た
  • 「あなた、うつ状態ですよ。結構重症だと思います。よく今まで我慢してこられた」とはっきり告げ、これまでの苦労を労った。
  • 痛みが再燃する頃、――に捨てられた父親が、自分たちの家に戻ってきて一緒に生活したいと言い出した。それが母親に判明し、遺産相続などの件でもめだした
  • 単発的な受診した総合病院や心療内科では聞き出せない家庭環境や生い立ちなどを共有できる関係になっていた。そのため現在の診療の中で過去の患者背景を聴取し、その苦しさに共感することができた
  • 女性の症例では、家庭内での対人関係が痛みの苦悩症状の持続増悪因子になることが多いのに比較して、男性の症例のある種のタイプでは、職場における自尊心の問題が最もインパクトのある苦悩であることが多いようです
  • 患者さん自らおこした行動を治療者が「認証」し、社会での適応を促進する「エンパワーメント」の役割が、実際の慢性痛治療では、特に有用です。
  • 治療的対話を通して、安定した信頼関係から人間不信を少しでも払拭していくなかで、どこかで抑圧されてきた過去の怒り感情を医師に向ける時もある可能性もありますが、そういった事態が起こりえることも予期しておくと、患者さんが家族に対して時折「切れてしまう」事態も理解できます。その中で、過度に治療者が反応せず、妥当に反応し、怒りに至る心理的背景を丁寧に傾聴する段階も来ると、さらに治療が展開すると思われます。
  • 危機的状況を乗り越えて、それもで自主的に受診されるようになると、危機感が減り、一気に良い展開になることをよく経験します。治療関係が近付いていくにつれておこることもある、こういった一過性の患者―医師の関係性の危機的状況も、段階的心身医学的治療のヤマ場であることを念頭におく。