荻野祐一 痛みを想像した時、ダイエットした時 ペインクリニック 2013;34(12):1651-1657
- pain matrix 痛みに特異的な脳領域というよりは、生体にとって重要な感覚情報を検出することに(detection of the salient sensory input)関わっているという主張もある
- 2003年にScience誌に掲載された研究論文、「社会的疎外を受けている時は、身体的痛みと類似の脳部位が活動する」は、痛みのパラダイムシフトにおける金字塔的研究である
- 近親者との死別、社会的に不当に扱われた場合、妬み感情ー痛み関連領域の活動みられる
- 痛みと報酬の関係は相互にいわば天秤のようなバランス関係にある
- 慢性痛やdysfunctional painになりやすい人の脆弱性の因子として、海馬と海馬周囲の体積が小さいことが示唆されている
- 脱水状態では痛み閾値が低下するとともに、fMRIでより広範で大きい痛み関連脳領域の活性化がみられた。一方、補水時には、痛み閾値は上昇し、fMRIでは報酬系領域の活性化を認めた。すなわち、脱水時には強い口渇感と神経過敏をベースにした痛覚過敏がみられ、反対に補水した場合には、口渇感と痛み感覚を癒やすことが、報酬系活動の活発化に現れてきた
- 甘い飴は報酬系脳領域を活性化させ、痛みと関連脳領域の活動を低下させた。味覚のうち、鎮痛作用があるのは甘みのみである。では、なぜ甘味が痛みを癒すのか、過去のラットを用いた実験の文献から、下行性抑制系に関する内因性オピオイドの関与が示唆されている
- 前頭前野(prefrontal cortex)の機能不全こそ、慢性痛病態の”本丸”とみられており、同部位の機能不全からきたす痛み(dysfunctional pain)は、従来の痛みの3つの区分(侵害性・神経障害性・心理的要因)を総括する、新たの痛みの概念となりうる