伊達久 私が心理アセスメントに目覚めたわけ ペインクリニック 2013;34(6):841-845
- 慢性痛が遷延化する患者の多くには、心理・社会的な要因が隠されていることが多い。著者の独断と偏見であるが、慢性痛患者で難治化する場合は以下の4つのどれかに合致することが多いと思っている
- 1 生育歴が問題の場合(対人交流障害の合併)
- 2 労働災害患者や事故による被害者(自賠責)の場合
- 3 知的障害がある患者の場合
- 病態の理解も低く、治療に対していわれたことも、実はうまくできずに、問題解決能力が低いためにセルフコントロールが難しく、痛みの遷延化につながることが多い
- 4 医療に対して怒りのある患者の場合
- 心理テストは現時点での心理要因が明らかになるが、慢性化した要因の多くは過去の心理社会的背景が関与しているため、十分に解明できない可能性がある
- 心理テスト以外にどのようにして心因的要素を解明していくのであろうか?それは、治療的対話である。患者と対話しながら痛みの原因を推察していくことである。単なる問診ではなく、心理的影響を加味した診察であり、ある意味では会話をしながら患者への気づきを促し治療となるものである。この時にインタビューという意味合いで患者の心理社会的背景を聞き出していく技術が必要である。聞く技術は、患者がいかに話しやすい雰囲気を作るかであり、それにより多くの情報を得ることができるようになる。患者にとっては味方と感じてもらうことが重要であり、敵対した立場や詰問的雰囲気では十分な情報を得ることはできない。このようにして得られた情報のうち、気になる部分を深く掘り下げていくことにより心因的要素が解明できるのである。
- 慢性痛の特徴としていくつかのキーワードがある。過活動、失感情状態(アレキシサイミア)、破局化などがある
- 患者における心理社会的背景が見えてきたからといって、すぐに治療に結びつくわけではない。患者自身がそれに気づくことにより効果が現われてくる。痛みの強さは変わらなくても、気にしなくなり苦しさが減ると、生活への支障度が減る。慢性痛患者のある意味のゴールである。