身体表現性障害としてのしびれと痛み

池口邦彦 身体表現性障害としてのしびれと痛み Medical Practice 2007;24(8):1435-1438

  • 1986年の国際疼痛学会では痛みpainを、身体表現性障害の痛みをふまえて、以下のように定義している。「不快な感覚性および情動性の体験であり、それは実際または潜在の組織損傷を伴うものと、そのような組織損傷の用語を使って患者に表現されるものがある」。この定義の特徴として、1痛みに伴う情動が協調されていること、2組織障害の有無は問わないことがあげられている
  • 治療
  • 治療の一部としての病態説明
    • 身体所見および画像などの検査結果に異常がなく、病気の原因は、心理的なもの、精神的なもの、ストレスによるものと患者に説明すると、怒りだしたり納得しない患者が多い。検査に異常がない場合は、何らかの機能性疾患と説明するほうが良い。治療的指導において、疼痛と辺縁系などの情動に関係した脳回路がどのように、患者の疼痛に関与しているか説明すべきである。そのためには痛覚とその情動回路のメカニズムを理解していると患者に説明しやすい
  • 治療に際しての医療者の心構え
  • 疼痛性患者の過度の要求に応えられないときに、医療者側に強い否定的な感情を引き起こすことがある。このような患者にたいする面接は、医療者にとっても特に大きなストレスとなるため、医療者のサイドが混乱を示し、患者への対処が困難となることがある。その結果として、医療者が患者に対して不適切な言動を行なってしまうことが少なからずある。この否定的な感情的、態度や混乱は、患者にも感知され、その後の診療に悪影響を与えたり、患者の症状を悪化させる要因にもなりかねない。医療者は、感情的で過度の医学的援助を求める患者に引きづられて自らも感情的にならない、もしくは感情の変化を面に出さないような努力が必要である
  • 精神療法
  • まず、行なってはいけないこととして、「あなたの疼痛は心因性のものであり、すべてがあなたの心の中で起きているだけですよ」といって、すでに症状が身体化されている(身体疾患を信じている)患者と対決姿勢を示してはいけない。たとえ、その疼痛の原因のほとんどすべてが心因性であるとしても、患者にとっては、身体化された疼痛は、現実の疼痛であると理解し、共感していると感じさせる態度をとらなくてはならない。疼痛の情動的な側面からアプローチするには、患者の生活上の痛みに対する対人関係の細部をよく調べることから始める