細井昌子 慢性疼痛の系統的治療における心身医学的治療の位置づけ Medical ASAHI 2009 Jun 62-63

  • 迷宮入り症例 学習性疼痛と精神医学的メカニズムによる疼痛
  • 臨床的な慢性疼痛は、侵害受容性疼痛、神経障害性疼痛心因性疼痛が、各症例の各時点で様々な割合で混在した複合体で考えることが重要である
  • 質的に異なる痛みの複合体を合併した不快な感覚情動体験として痛み体験の総和を患者が経験しており、その体験は分離できないという事実を治療スタッフが理解しておくことが重要である。
  • 難治化した慢性疼痛症例では、患者自身だけでなく、家族や医療スタッフがその病態に組み込まれていることが理解される
  • 痛み体験は不快な感覚体験だけでなく、自律神経系への入力も有り、生理学的にも同時に不快な情動体験を常に伴っており、患者の訴える苦痛はその生理的メカニズムをそのまま反映していると考えると、複雑な患者の反応を理解する一助となるであろう
  • 破局化した患者は、そのつらさを患者のもっとも重要な他者(多くは家族)に理解してもらいたいと行動し、その行動が疼痛行動となる。この破局化および疼痛行動は、難治例での治療対象となることが重要である
  • 破局化と増大した疼痛行動により、家族の情動も不安定となり、患者と家族が連帯して、医療に助けを求めてくるのであるが、それがエスカレートすると、懇願あるいは攻撃的に医療者に対処を求めて圧迫感を抱かせるものとなっている
  • その圧迫感ゆえに、医療スタッフも多大な心理的ストレスを感じ、過剰に特別扱いしたり、もしくは攻撃的対応に苦慮して無意識ながら否定的に対応してしまうことがあり、その反応によって、患者側の医療不信が惹起されていく。