山本慎也 ラバーハンドイリュージョン clinical neuroscience 29(8);888-891;2011
- ラバーハンドイリュージョン 1998 Botvinick & Cohen
- 被験者は椅子に座り、片腕を机の上におく。被験者自身の腕が被験者から見えないように衝立で隠し、被験者の前にゴム製の手のおもちゃを本物の腕と並行に置く。そして、実験者が本物の手と偽物の手を同期して筆で触る。たったこれだけの作業で、被験者は偽物の手がまるであたかも本人自身の手のように感じるようになってしまった。
- ラバーバンドイリュージョンには、触れれた場所がどこかという触知覚の位置の移動という現象と、どれが自分の体であるかという身体所有感の変化の、2つの現象が生じでいると考えていいだろう
- 触知覚の移動例 道具で物を触る際に、われわれは道具を持っている手そのものではなく「道具の先端」で感じがちである
- 触知覚の移動と身体所有感の変化は、脳内で類似の回路が用いられている可能性はあるものの、現段階では別物として扱うのが妥当ではないかと考えられる
- 体外離脱体験(out-of-body experience) われわれの体の一体感は脳によって作られているということを理解することができる。右角回 (right angular gyrus)を電気刺激することによって、体外離脱体験が誘発されることが報告されている
- ラバーバンドイリュージョンによって身体所有感が変化し、ゴムの手があたかも自分の手であると感じるということは、裏を返せば、自分の手が自分の手のようには感じなくなっているといってもよい
- Moseleyらは、身体所有感を失った本物の手に注目した。彼らはラバーバンドイリュージョンが起こった際に皮膚の温度を測定した。すると身体所有感が偽物の手に移った時にだけ本物の手の体温だけが特異的に下がったという。身体所有感の変化が温度を下げたのか、双方向性の相互作用でループ状に効果が促進されているのか、興味は尽きないが、身体所有感が単に感覚の問題として独立しているのではなく、自律神経系における植物性機能とも密接に絡んでいることが示唆される
- ラバーバンドイリュージョンは、本物の手に与えられた触覚情報と偽物の手を触っているという視覚情報の2つが組み合わさっておこるため、視覚と触覚が統合される脳領域が関与していることは容易に推定される
- ラバーバンドイリュージョンには、触知覚の移動と、身体所有感の2つの特性がある
- 腹側運動前野、被殻 手の位置によらず、手の近くに来た視覚刺激に対して発火
- 頭頂間溝前壁 手で覆い隠しても、(覆いの下の実際の)手の位置の知覚に視覚刺激が来た場合に発火