山本直示 子どもの心因的痛みの評価と対応 小児看護 2011;34(8):962-968
- 痛みに大きな影響を与える心理的要因として、症状(痛み)が生じることで利益を得るという疾病利得があげられる
- 心因的痛みは、長期に持続し、訴えることで子供の要求を満たす手段となることがある
- 痛みの長期化は、子どもの自己効力感を下げ、自発性・自己評価の低下や抑うつ状態へとつながる恐れがある
- 痛みの訴えにより、他者(家族)を操作する行動となることもある
- 心因的痛みに対しては、「傾聴」「受容」「共感」が、基本的姿勢となる
- 医療者は子どもの訴えを丁寧に扱うことが大切である
- 初期には痛みそのものに対するケアが主となる。そして、痛みに対する直接的ケアをしながら、痛みの訴えを傾聴していくことで、「ありのままの自分を受け入れてもらえる」という自己存在を保証する感情が芽生えてくるであろう
- 親へのアプローチ
- 子どもの痛みの訴えに、器質的疾患があることを信じてさまざまな医療機関の受診を子どもにさせるが、いっこうに改善せず、親子共々、疲弊している状況をよくみる。最終的には心因的痛みであることを指摘され、納得する一方で、自分たちの育児が否定された感情を抱き、「自分たちに問題があったのではないか」と罪悪感をもつこともある。それが、育児への自信喪失となり、不安的な精神状態に陥ることにもなりかねない。また怒り、否認、悲しみ、混乱に陥った親は医師・看護師を攻撃することもある
- 看護師は、問題点を指摘するだけでなく、そのような状況にいたらざろうえなかったことに共感し、今までの苦労をねぎらうべきである。親を子どもの治療には不可欠な存在ととらえ、親が安定した精神状態となるようにサポートする。そのためには、親の苦しみ、悲しみなどさまざまな思いを受容する必要がある