複合性局所性疼痛症候群 CRPS

植松弘進、柴田政彦 複合性局所性疼痛症候群 CRPS 臨床と研究 2011;89(2);189-194

  • 最近では CRPS患者で見られる異常感覚、運動異常を心理的異常ととらえずに、脳機能障害ととらえる報告が増加して来ている。CRPS患者においては脳卒中後にみられる空間無視(neglect)様の現象が高率にみられ、目を閉じた状態では刺激の部位より広い範囲に感覚を認識するなど、うつや不安など情動の変化だけではなく高次機能の障害が報告されている
  • 米国で提唱されるCRPSの治療アルゴリズムでは、治療の主幹はあくまで”機能障害がに対する治療(リハビリテーション)”に置かれている。神経ブロック、薬物治療や神経刺激法といった”疼痛に対する治療”は”機能障害に対する治療(リハビリテーション)”を促進するための補助療法であるとの位置付けである。さらにCRPS患者の抑鬱状態、不安、怒り感情が疼痛と疼痛に随伴する問題行動(疼痛顕示行動)に関連していることから、”機能障害に対する治療(リハビリテーション)”や”疼痛に対する治療”に並行して”心理面に対する治療”も同時に行うことが推奨されている
  • このようにCRPSは治療開始時から多面的アプローチが必要であり、そのときどきで最適な治療法を組み合わせることではじめて治療効果が期待できる。集学的な CRPS治療の成功のためには、チーム医療に参加する全員が共通の治療目標を設定し、さらに他の医療職者が担当する治療目標も理解し全体にたいするは医療が必要である
  • 侵襲的治療を繰り返し行ったことが、かえって患者の医療に対する依存心を高める可能性についても配慮すべきだったのではないだろうか
  • CRPSは疼痛を主訴とする疾患で疼痛緩和は特に病初期においては重要ではあるが、患者の社会生活を長期的に予測し、治療計画を立てていくことも重要である。非現実的な治療目標を立てることは治療する側も患者本人も失望の繰り返しとなり、治療意欲をかえって損なうことになる