本田哲三、本田玖美子、高橋理夏、中村幸男、大房幸浩 慢性痛のリハビリテーション ペインクリニック 2012;33(12):1683-1690

  • 多相モデル
    • 侵害刺激レベル 末梢器官障害のシグナル
    • 疼痛感覚レベル 様々な神経障害性痛
    • 苦悩、および疼痛行動 前頭前野・小脳皮質レベル
  • 最近では線維筋痛症、慢性腰痛から過敏性腸症候群にいたる慢性痛全体を、脳機能異常(神経過程変調モデル)と理解し、慢性痛も機能的疼痛症候群と呼ばれるに至っている
  • Chapmanらは、以上の3モデル(神経系、内分泌系、免疫系)は、お互いに密接に連携し生体を防御する包括的システムとして機能しており、慢性痛の本態はストレスに対するう包括的システム全体の持続的な機能異常であるとしている
  • 脳SPECT検査の導入により、慢性痛患者における脳機能状態の可視化が可能になった。その結果プログラムに以下の様な変化が生じている
    • 患者に脳機能画像を提示することにより、スタッフと変調した脳調整をターゲットとする治療同盟が容易となった
    • 脳機能変調部位に合わせたリハビリ・メニューの個別微調整が可能となった。
      • 前頭前野背外側部機能低下への投薬および認知リハビリテーション施行
      • 頑固な無意識的な疼痛行動(小脳機能亢進)に対する行動療法的介入や家族調整介入の強化
  • 以上述べたように、本プログラムは認知行動療法を基盤としながらも、現在は慢性痛患者の包括的「認知・脳・身体・環境「調整」プログラム(認知的ゆがみ(correcting),脳機能以上(tuning)、身体機能低下(reconditioning)および環境ストレス(modifying))に変容して現在に至っている
  • 慢性痛の本態は、「末梢器官の軽微な障害による侵害刺激(契機)+包括的システム機能異常+(過度の安静の結果としての)二次的体力・認知機能低下(廃用)」であると、現在われわれは理解している
  • 包括的システム機能異常の外因は、社会的ストレス(われわれが対象とすることの多い中年の患者では、女性では配偶者との関係、男性では職業上のトラブルが多い印象)であり、素(内)因としては、幼少期における心的外傷体験による疼痛行動容易発現傾向が挙げられる