- 作者: クレイグリーベンソン,菊地臣一
- 出版社/メーカー: エンタプライズ
- 発売日: 2008/03/31
- メディア: ハードカバー
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- 第二章 脊椎の痛みに筋、関節、神経系が果たす役割
- 筋骨格系の障害には、構造的要因、心理社会的要因、生体力学的要因、神経生理学的要因が関与している。構造的病変の重要性を強調するのをやめ、心理社会的な疾病対処行動がおこるのを防ぐ最小限主義のアプローチで、たいていの患者は回復する。これは主に患者にはっきりと安全を保証し、彼らを再び活動させるきわめて実直な行為の結果として可能になる。残念ながら、長年にわたって構造病理学が生物医学的なモデルの中心であった。臨床家と患者はひとしく、患者の痛みの解剖学的原因を視覚化出来る最新の画像化技術の威力に魅了されている。しかし、電話の写真では、それが鳴っているかどうかわからないように、画像検査で脊椎の機能についてわかることは限られている。実際、「患者中心」アプローチの中心にあるのは、個人の機能的能力や耐性である
- 第三章 質の保障:脊椎の問題の概観とそのマネジメントのための最近の試み
- 痛みの構造的原因を明らかにして治療するという単純化した生物医学的なアプローチを重視しすぎたことが、診断のための検査、床上安静、麻薬性鎮痛剤の投与、手術のやり過ぎを招いた
- 腰痛は広く蔓延する問題で、一定の進歩がみられるもののそれが一般に受け入れられていない。自然経過は考えられているほど短期的でなく、大抵の患者が急性発症の後、長引く症状と活動非耐性に苦しむ。なぜ大部分の人が急性腰痛になるのか明確ではないが、現在では第一に心理社会的要因によって急性痛が慢性になることが知られている。
- 第四章 生物心理社会的モデルを臨床現場へ
- 活動制限が長く続く腰痛を有する人は大概、構造的要因が、自分の痛みと障害に決定的役割を果たしていると思い込んでいる。しかし現在では、大抵の構造的病変は、症状のない人にも、症状のある人にの場合とほぼ同じくらい存在するということが知られている。この事実から、そして腰痛の従来の治療が一般に満足のいく結果を出していないということもあって、生物医学的モデルが批判的に評価されるようになった。
- 痛みの認知は、侵害受容と、その人の態度や考え方、社会的環境の療法から大きな影響をうける。
- 腰痛障害蔓延の医学的理由
- 構造的診断を重視しすぎ、床上安静を指示しすぎ、手術を実施しすぎ
- ミエログラフィー、CTスキャン、MRIのような高度の画像診断技術を使っても、同様の陽性所見が、無症状の人の28-50%に存在するのである。
- 無症状の人に構造的病変が存在しても、将来問題となる可能性が大きいと予想できるわけではない。
- Nachemson 厳しい基準にしたがってX線写真から判定した時でも、痛いのある被験者とない被験者とでは”椎間板の変性”の発生率に差がないことが証明されている
- Kendrick X線撮影は、患者が良くないと信じる気持ちを助長あるいは強化し、より大きな痛みの訴えと、より大きな活動制限につながる
- 椎間板の大きな突出がある場合には手術が必要であるという考えは、文献では支持されていない
- Carragee 手術前のMRIは、椎間板手術のアウトカムを高い信頼性で予測できる因子とはいえないと繰り返し述べている
- 異常な疾病対処行動
- 感情(情動)面 不安、抑うつ
- 認知(対処)面 恐怖回避行動、ストップルールの無視、腰痛問題の悲劇的解釈(ラベリング)
- 精密検査による診断をしたほうが良い場合、MRIその他の構造的評価に限定すべきではない