名医に学ぶ 腰痛診療のコツ 2006 永井書店

腰痛診療のコツ (名医に学ぶ)

腰痛診療のコツ (名医に学ぶ)

  • p2 痛みには「心」の問題が深く関与していることは推察できますが、その理由を私たちは明解には答えられません。
  • p5 米国 椎間板の手術や固定術には、約8倍の(頻度の)地域差がある。腰痛に対する考え方が統一されておらず、その結果、患者さんの一部は適切な治療を受けていないのではないかという疑問が出てきます。
  • p7 患者さんの視点にたった評価について述べてみます。患者さんのQOLや満足度の重視では、「腰痛の除去」を目的とするのではなく、「腰痛の意味」を尋ね、どのような障害があるのかという視点にたった治療の組み立てが重要です。すなわち、疼痛の除去は障害をとりのぞくための手段なのです。事実、患者さんが医療機関を訪れるのは痛いからではなく、痛みにために何かの活動が妨げられるからなのです。ですから、治療の目的は痛みを取り除くことではなくて、活動できるようにすることなのです。痛みの除去は、治療の目的ではなく手段の1つなのです。
  • p8 腰痛診療従事者は患者さんの愁訴に対して共感を示し、患者さんに希望をもたせるような前向きな説明と励ましが役割としてもとめられているようになってきています。
  • p9 最近では、現代の科学の観点からみても、治療における最も強力な心理的効用は医師の個人的な力(人柄)であり、プラセボ(偽薬)は最も有効な治療の一つです。
  • p12 このような新しい診療のあり方を考えると、患者さのQOLや満足度を重視した診療体系が求められているのです。病態は同じであっても患者さんの価値観や希望を尊重すると、患者さんにより治療の選択は異なってくるはずです。腰痛に対する診療の場で医療従事者と患者さんとの「共闘」の姿勢ができれば、患者さんと医師の良好な信頼関係が構築できます。そして、良好な関係下で患者さんへの医師の共感、指示、そして励ましは、なによりの薬になります。このような診療のあり方が確立されると、些細な誤解から発生することの多い医療上のトラブルも大きく減らせるはずです。
  • p16 米国での腰痛診療ガイドラインでも、椎間関節症、変形性脊椎症、腰椎椎間板症、挫傷などの疾患名は、症状との関連性についてはなんら科学的な根拠は提示されていないことを指摘しています。
  • p16 椎間板や脊椎の損傷とか椎間板の突出といった言葉が、患者さんに「病的な変化」とか「外傷」などという印象を与え、無用な不安をかき立てている可能性があることは否定できません。
  • p19 慢性腰痛 たとえすっかり治らなくても、2,3週間から1ヶ月に一度医療機関に通って、それによってその人のライフサイクルがまわっていればそれはそれでよいのではないか、という考え方も成立するのではないでしょうか?
  • p21 単純X線写真で不安定性がをみたからといって、すぐ「これが腰痛の原因です」と断定することは慎重であるべきです。
  • p23 外来に長く通院している患者さんを診察する場合には、「cure」でなく、「care」という視点からも患者さんをみると、また異なった対応もあるのではないかと気付かされます。