内臓痛のメカニズム

福土審 内臓痛のメカニズム Bio Clinica 2008;23:424-428

  • 脳機能画像を用いて大腸伸展刺激時の局所脳血流の変化をみると、健常者でみられる前帯状回の賦活が、IBS患者ではさらに亢進しており、ときに前頭前野の賦活化がみられる。
  • これらより、IBSの消化管知覚の脳内プロセシング異常が示唆される。
  • IBS患者にみられる内蔵知覚過敏重要な原因として、消化管から中枢に伝達される信号の処理過程が感作されている病理が示唆される
  • IBSは神経学的には長期過敏性という言葉で表現される

平戸政文 中枢性疼痛(視床痛)の発症メカニズムと外科療法 Bio Clinica 2008;23:429-435

  • 視床痛の発症機序
    • Dejerine adn Roussy 視床後腹外側部の血管障害病変
    • CTによる検討 血管障害発症時は形態的変化を認めず、疼痛出現慢性期には病変が著しく縮小する 慢性期に病変が大きい例では疼痛が出現しにくい
    • これらの事実から、視床痛出現の大きな要因として疼痛信号の伝達、中継を行う視床腹外側部感覚中継核が血管障害発生時に何らかの影響を受けた後、完全な破壊を免れ残存していることが重要であることが示唆された
    • 視床痛例では、実際、視床感覚中継核病変、あるいは病変周囲において神経活動は残存亢進しており、sらに、機能構築の再編に起因すると思われる種々の機能変化を生じている可能性が示唆された
    • 視床痛はその臨床的特徴から、誘発痛、自発性定常痛、間欠性電撃痛の3つの要素に分けることが可能
    • 誘発痛 視床感覚核そのものの機能異常と深く関連が示唆
    • 自発定常痛 視床感覚核周囲の疼痛伝導路を含む広範な機能異常がその成因に関与していると考えられる
    • 間欠性電撃痛 視床感覚核内で観察される不規則なバースト放電との関連が注目
    • 視床痛例では視床感覚核およびその病変周囲の神経活動に種々の変化が認められており、これら疼痛伝達系の活動異常が視床痛を生じる大きな原因となっている可能性が示唆された
    • 視床痛例では疼痛信号の伝達、中継を行う視床感覚中継核病変、あるいは病変周囲において、機能構築の再編成に起因すると思われる様々な機能変化を生じており、視床において末梢からの入力信号(侵害刺激のみならず非侵害刺激にも)に異常、過剰に反応したり、大脳皮質中心溝付近(感覚運動野)において感覚信号の受容に変化を生じたりして、疼痛伝達、受容系に大きな変調をきたし難治性の疼痛が出現しているものと考えられる