宮地英雄、鈴木志保子、宮岡等 精神科で見られる持続性の痛み 痛みと臨床 2006;6:290-294
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- 持続性の痛みでは、痛みが出現する前後の生活史や症状を詳細に尋ね、痛みに関連する問題を整理し、症状に対応する必要がある
- 慢性疼痛や心因性疼痛という用語は定義があいまいであり、痛みへの不適切な対応につながる可能性がある
- 痛みの心理的背景として、心気傾向、うつ病の合併、疾病利得、薬物依存などがある
- 治療における不十分な科学性や不適切なインフォームドコンセントは痛みを持続させる原因になりやすい
- 慢性疼痛と心因性疼痛
- 持続時間によって急性と慢性を区別すればよいだけであるが、実際には概念の中に期間以外の要因を含めて用いることが多い
- 慢性という限りは急性の時期を経ているのか?
- 身体科の医師と話していると、「原因不明の痛み」に「心因性疼痛」という診断をつけることで、「診断がつかない」という自らの不安定さを避けようとしているのではないかと感じることがある。
- 痛みに見合うだけの身体所見が認められない症例の考え方
- 心気傾向の強い場合
- 痛みが持続する症例のなかで詳細に病歴を聴取すると、かなり前から他の身体部位の愁訴を認めたり、頭痛、腰痛、背部痛などさまざまな部位の身体愁訴があるが原因がわからず、長年にわたって病院を転々として検査を受けている場合がある。極端な場合、今回問題になっている痛みが、それまでの愁訴やほかの身体部位の痛みといれかわっただけであるかのようにみえる場合もある。このような例では精神医学では心気症と診断されることが多く、自分の身体に注意を向けやすいという性格が関係していることが多い
- 対応としては外傷前から認める愁訴も含めて原因などを説明し、どこまで痛みをとることが今回の治療目標であるかをできるだけ明確にすることであろう。
- うつ病の随伴症状としての痛みを訴える症例
- 疾病利得が疑われる症例
- 医原性の問題の関与が疑われる症例
- 薬物依存の傾向がみられる症例
- 精神疾患治療中の患者に見られる痛み
- 精神的な原因で痛みが起こっていることを証明することはほとんど困難である。「痛みの原因は現時点では見つからないし、この検査でみつかっていないということは、将来がんになるなどという心配なものである可能性はほとんどない。現時点で治療のできるのは精神症状なので、まずはそちらの治療を中心にしたい」のようのあ説明の方が望ましい。
- 痛みは多くの専門家が関係して対応すべき症状であるため、やもう得ない面もがるあが、「持続する痛み」に関する研究はなんとなくまとまっていない。麻酔科、精神科、心療内科などの医師が専門家のような顔をして関わっているが、よこのつながりが不十分である。学問自体の進歩も不可欠であるが、専門家の横の連携が改善するだけで「痛み学」はずいぶん進歩するはずである。