渡辺登 整形外科を受診するメンタル疾患患者に気づくポイント 骨関節靭帯 2005;18(10):883-890
- 組織の病変だけでは説明できない体の症状を訴える場合、整形外科医はメンタル疾患の合併を考えなくてはならない。しかし整形外科医はもっぱら痛みやしびれの訴えが
- うつ病
- 最も価値をおいたことに意欲や関心を失っており、荷物を背負ったように体は重く、祭りのあとのように心身のエネルギーが低下した状態
- うつの症状で整形に関連するもの
- 初老期 腰が重い、足がだるい、腕を動かしにくい、手が強ばる
- 症状は朝に悪く、夕方から夜にかけて楽になる日内変動
- 睡眠欲と食欲が低下しないメンタル疾患は珍しい
- 専門医への紹介 病名をつけてもらうのでなく、困ったことを楽にしてもらうために診察してもらいましょう
- うつが否定された場合考えること
- 身体化障害、疼痛性障害、転換性障害、心気症、身体醜形障害
千田要一、久保千春 慢性疼痛(心因性疼痛)の診断治療のガイドライン 骨関節靭帯 2005;18(10):891-896
- 1980 DSM-III 心因性疼痛障害 psychogenic pain disorder
- 1987 DSM-IIIR 身体表現性疼痛障害 somatoform pain disorder
- 1994 DSM-IV, 2000 DSM-IV-TR 疼痛性障害 pain disorder 心理的要因と関連した疼痛障害と、心理的要因と一般身体疾患の両方に関連した疼痛性障害
- 慢性疼痛の原因
- 侵害受容性疼痛
- 機能性疼痛
- 神経因性疼痛
- 学習性疼痛
- 精神医学的疼痛
- 2002 心身症診断治療ガイドライン
- 一つまたはそれ以上の解剖学的部位における疼痛が、既存の身体的検査と治療にもかかわらず6ヶ月以上臨床上の中心を占めている
- その疼痛は、臨床的に著しい痛みの自覚と愁訴、それによる日常生活での活動の制限ないし障害を引き起こしている
- 心理社会的要因、または心理社会的要因と身体的要因の両方が、疼痛の発症、持続または悪化、重症度に重要な役割を果たしている
- 気分障害や不安障害が、疼痛に先行あるいは同時発症したり、その結果として発症する場合もある
- 治療
- 認知行動療法
- 痛制御感
- 自己効力感
- 恐怖回避感
- コーピングの形式と戦略
- 疼痛行動を治療の対象
長井信篤 臨床から見た心因性疼痛の診断 骨関節靭帯 2005;18(10):897-902
- 慢性疼痛
- 痛みの強さと障害の程度の間に明らかな相関がなかったり、組織損傷を知らせる警告反応が消失している
- 身体要因が乏しく心理社会的要因が密接に関与
- アレキキシサイミア alexithymia 失感情症
- 自らの感情の言語化、情動の体験や表現が乏しく、内面を直接的に痛みなどの身体症状として表出しやすい
- 性格特性 真面目、几帳面、徹底性、完璧性
- うつ病や心気症などの精神疾患に起因する痛みは、疼痛閾値の低下や疼痛過敏性の上昇により些細な侵害刺激によって誘発される。
- 痛みの強さは、かならずしも侵害刺激の大きさに比例せず、不安や恐怖などの情動、集中、期待、学習などにより修飾される
- 行動理論
- 回避条件付け
- オペラント条件付け 痛み行動により患者に取って報酬になる結果が随伴されて痛み行動が形成強化
- 痛み行動を明らかにするには、痛みの先行刺激と強化刺激を丹念にしらべる必要がある
- 慢性心因性疼痛は、身体的因子が存在しない疼痛ではなく、身体心理社会行動的因子など多因子の絡んだ病態であり、診断にあたっては症例ごとの詳細な検討が必要である
田口 敏彦 若年者の心因性腰痛 骨関節靭帯 2005;18(10):903-907