ストーリーで理解する痛みマネジメント 5 痛みのチームアプローチ

永田将行, 江原弘之 ストーリーで理解する痛みマネジメント5 痛みのチームアプローチ スポーツメディスン 32 (7):43-45, 2020.

  • 痛み治療のために臨床心理士が整形外科に勤務するのは意外かもしれません。しかしそのようなクリニックは増えてきており、痛みと関連する苦悩を抱える患者や、精神疾患が併存する痛みの患者にとくに有効だと実感しています。
  • 日本の医療は医療者側から受動的に行われる関係が強いと思います。患者には医師から指示された治療に従う、「コンプライアンス(治療の遵守)」が求められますが、今後とくにリハビリや慢性疾患の治療には、患者が積極的に治療選択に関与する「アドヒアランス(治療の相互理解)」が重要となります。
  • (学際的治療のクリニックでは)診察時に元気がないことを医師から言われたAさんはとても驚きましたが、指導ができず役割を果たせない悩みを打ち明け、薬の相談をしました。肩の痛みだけでなく仕事の負担と役割に関する悩みもあり、睡眠時間が十分にとれていないことがわかりました。そのため、睡眠導入剤が処方されました。

ストーリーで理解する痛みマネジメント4 慢性疼痛の国際疾病分類

永田将行, 江原弘之 ストーリーで理解する痛みマネジメント4 慢性疼痛の国際疾病分類 スポーツメディスン 32 (6):43-45, 2020.

  • 慢性疼痛においての治療のアプローチは、痛みそのものを治療するだけでなく、考え方や行動のアプローチをしならが、身体を強化し運動を継続することで、前向きに進むことが重要になってきます。
  • なぜ疾患としての痛みの定義が必要なのでしょうか?これまでの医療では生物医学モデルに基づくことが多く、筋骨格系や整形外科的に問題のなが見つからない場合は、「原因がないから治療のしようがない、気のせいだ」とされる慢性疼痛特有の問題がありました。
  • 疾患として痛みが定義されると、筋骨格系の異常や整形外科的疾患がみつからなくても、痛みそのものを対象に治療が開始することができ、痛みそのものを対象に治療が開始することができ、医療体制の大きな変化を生むことができます
  • スポーツに取り組む人にとっても有益であると言えます。検査で異常がなければ、心理的な問題として、運動を休止し、痛みがとれるのを待つという選択しかできなかったものが、より積極的で前向きな取り組みができるようになります。

ストーリーで理解する痛みマネジメント3 痛み行動

永田将行, 江原弘之 ストーリーで理解する痛みマネジメント3 痛み行動 スポーツメディスン 32 (5) 43-46, 2020.

  • 痛み行動
    • 1968 ワシントン大学 臨床心理士 フォーダイスが提唱
    • 痛みの存在を示唆する言動・行動
    • 慢性疼痛患者の中には、痛み行動に痛みの存在を示す意味がなく、痛みを訴える行動だけ繰り返される場合がある
    • 繰り返される痛み行動は患者を家族や社会から孤立させ、治療に依存しやすくなり医療者との関係も悪化させます
  • フォーダイスの概念は痛みそのものを治療するのではなく、行動を治療する点で当時非常に画期的な痛みのマネジメントとなりました。
  • Loegerの四重円理論
    • 侵害刺激/痛み知覚/苦悩/痛み行動
  • (痛み行動に対して) むしろ、良いとも悪いとも言わず中間的に付き合いアドバイスを続ける中で、患者が能動的に行動し始めるのを待ちます。適切な発言や行動が現れたときにはしっかり認めて、褒めてフィードバックするのが、痛み行動を帰るタイミングとなります。
  • 我々にやるべきことは原因を指摘し明らかにするよりも、変化を待ちながら寄り添うことだと思います
  • 100%の状態を求めるのは、アスリートとしてよい面もありますが、「全か無か思考」「べき思考」など、現実には非機能的な思考(認知の歪み)が形成してしまっているのであれば、現実に適応させていく必要があります。

ストーリーで理解する痛みマネジメント2 痛みの訴えをどのようにとらえるか

永田将行、江原弘之 ストーリーで理解する痛みマネジメント2 痛みの訴えをどのようにとらえるか スポーツメディスン 32 (4) 45-48, 2020.

  • 痛みは、その人の生育環境やその時々の社会状況など、その人固有の多くの要因の影響を受けた中で学習されてきたものです
  • 痛みによる身体的、精神的苦しみが増幅すると、その苦悩が行動として表出されるようになります。これを痛み行動を呼びます
  • これらの理解し難い表現も、その人なりの助けをもとめる信号と考え接していきましょう。無条件に受け入れる雰囲気をつくり、共感的に理解していくことは、痛みの慢性化を防ぐための第一歩となります。
  • 一方で、選手が痛み行動をとることに対し過度な報酬や利得をもたらしてはいけません
  • 訴えの分類 Melzakが提唱したニューロマトリックス理論
    • 感覚ー識別的側面
    • 意欲ー情動的側面 情動的訴えが強いアスリートには、安心を感じてもらわなければなりません。
    • 認知ー評価的側面 認知が現状と合致していれば大きな問題になりませんが、歪んだ認知状態にあるならば注意が必要です
  • 負の「意欲ー情動」的側面における表出が強く、ケガをしたことに対する気持ちの整理がまだついてない状態と推測されます。このような状態では、正確な医学的情報を提示しても、受け入れられる可能性は低いでしょう。最低限の医学的処置を行いつつ、愚痴を聞く、距離をおいて落ち着くまで待つなどの、気持ちのケアに気をつけていくことがよいと考えられます
  • 情動面に過剰に焦点があたってしまっている選手は、目の前の現実的な課題に目が向かなくなってしまう可能性があります。気持ちが落ち着く頃合いを見計らって、前向きな言葉を引き出すような対話が必要になってくるでしょう
  • 破局的思考
    • 痛みに対しての悲観的、否定的な情動や認知の一つの傾向
    • この傾向が強いと、痛みに過剰に注意がとらわれ、思考だけでなく行動までもがネガティブになりやすくなってしまいます。
    • 下位尺度 反芻、無力感、拡大し
    • これらの破局的思考が見て取れたら、まずは、その訴えが行動に寄り添うことが大切です。その際には、前回のコツのところで述べた中間的対応が効果的です
  • Bさんのように正しいことを伝えても認めない方は、自分が病気である部分にすがっていたいのかと感じることもあります。
  • 医療者は正確な情報を把握すべきですが、患者さんには必ずしも正確な理解を求めないこともあります。患者の認識や行動を強く否定するのは、それにより命の危険に関わる場合にだけにとどめています。
  • 医療者が原因で改善への障壁をつくらないようにしたいです

痛みのマネジメント

永田将行、江原弘之 ストーリーで理解する痛みマネジメント1 痛みのマネジメント スポーツメディスン 32 (3) 45-48, 2020.

  • 最近の研究において、痛みは、ケガや傷害の状況を正確に反映したものではなく、その感じ方、表現のされ方は、ストレスや社会的状況などに大きく左右されることがわかっています
  • このように、その人の背景となる社会的側面や、痛みを感じそれを表現している心理的側面まで考慮し、疾患、傷害を捉えようとする考えは、生物心理社会モデルと呼ばれます
  • 心理や社会的側面を抜きにしては、痛みのことを理解できないといってもよいでしょう
  • 介入のコツ
  • コツ1 話をよく聞く
    • アスリートは、プライドの高さや、競い合う環境におかれていることなどにより、痛み自体も素直に表現しないことがあります。
  • コツ2 中間的対応
    • 痛みに伴って表出される過剰な訴えや感情に対して、不必要な意味づけをしないように気をつけよう
    • その痛みの表現や訴えを、否定も肯定もしないこと
    • 話をよく聞くと前項で述べましたが、相手を無条件に受け入れる態度をとることと、痛みに意味づけをしてしまうことは異なります
  • コツ3 痛みを治すことを目標にしない
    • 「痛みを治すことを目標としない」というのは、痛みは何らかの「結果」として表出されていると考え、その原因となるものを解消することが痛みの解消につながるからです。痛みが治まるのは、結果として治まるのです
  • 臨床では、「患者の生活背景や生育歴に非常にストレスフルな要素を感じる」と表現される症例に出会うことがあります。このような症例は身体的な要因よりも苦悩として痛みを感じているのではないかと考えています。
  • 身体に対する恐怖感が薄い人と、濃厚にある人では、腰痛によって仕事に対する支障が大きく変わってくること、長期化すること、痛みの強度や生活習慣と関係があるとうことが研究で発表されています。
  • TSK Tampa Scale for Kinesiophobia
  • 患者の主観的な部分は生活背景にある「苦悩」なども含まれます。しかしこのようなもの以外は、このような枠組みで捉えたほうがようい、いわば質問紙で数値化したほうがよいと考えています。苦悩は患者さんそれぞれがもっている背景ですから、生きてきた歴史を紐解いたり、大変だったんですねと聞いたりしますが、そればかりではありません。

慢性疼痛のマネージメントについて

山田信一 慢性疼痛のマネージメントについて 臨床と研究 98(5):599-604,2021

  • 私たちはこの痛みの原因が不明とされた多くの患者を紹介され診察してきているが、痛みの原因は画像診断ができない(器質的な変化を伴っていない)だけで、機能的な面の評価が行われていないことが多く、機能面の回復から治療が行える症例も多く経験してきた
  • 慢性疼痛治療を行う上で重要なこととしては
    • 1 命に直結した問題点がない事
    • 2 原因が不明あるいは明らかでない場合であっても治療方法が存在する
    • 3 器質的な原因は画像診断できあにが、診察による診断は可能である
    • 4 セルフケアにより痛みを緩和させる方法が重要であること
    • 5 長い経過が必要であること
  • などを説明し治療を一緒に行っていくことを伝えていくことが重要である
  • 神経障害性疼痛は広く知られてきたが、よく知られているようで意外と見過ごされている痛みの原因として筋・筋膜性疼痛というのが存在する
  • 慢性疼痛治療は身体の痛みを緩和させることはもちろん重要であるが、なぜ慢性化しているのか、なぜ繰り替えされるのかという部分に目を向け、焦点を絞らないと決して良くなることがない
  • 神経ブロック治療にしても薬物療法にしても一時的には効果があっても、痛みが出現するような動作、行動を繰り返せば、痛みは繰り返し発生するのである
  • 患者が痛みの治療を求める際には、痛みの原因となった動作や行動を細かく追求し、治療とは別に痛みを引き起こすような動作や行動を改善できるよう、また改善していただけるように説明し、実際に行動を起こしていけるように指導をしなくては決して良くならない
  • 慢性疼痛治療は決して精神的な問題を追求するわけではない。多くが抱えている身体の問題点を、その人の日常生活の中から探っていくことから始めていただきたい。

storescuの準備

  • storescuの準備
  • storescuはDICOM ToolkitのDCMTKに含まれる

dicom.offis.de

  • 古い mac mini (moutain lion 10.8.5)にDCMTKをinstallしてみた
  • macへのinstallにはHomebrew/Fink/Macportsの3つの選択肢があるようだ
  • 私でもできそうな簡単な方法はMacPorts
  • まず、mountain lion用のMacPortsをdownload/install

www.macports.org
medicalware.org

  • 次に、上記にあるようにコマンドラインから 
    • sudo port install dcmtk
  • これで使用可能となった