ストーリーで理解する痛みマネジメント2 痛みの訴えをどのようにとらえるか

永田将行、江原弘之 ストーリーで理解する痛みマネジメント2 痛みの訴えをどのようにとらえるか スポーツメディスン 32 (4) 45-48, 2020.

  • 痛みは、その人の生育環境やその時々の社会状況など、その人固有の多くの要因の影響を受けた中で学習されてきたものです
  • 痛みによる身体的、精神的苦しみが増幅すると、その苦悩が行動として表出されるようになります。これを痛み行動を呼びます
  • これらの理解し難い表現も、その人なりの助けをもとめる信号と考え接していきましょう。無条件に受け入れる雰囲気をつくり、共感的に理解していくことは、痛みの慢性化を防ぐための第一歩となります。
  • 一方で、選手が痛み行動をとることに対し過度な報酬や利得をもたらしてはいけません
  • 訴えの分類 Melzakが提唱したニューロマトリックス理論
    • 感覚ー識別的側面
    • 意欲ー情動的側面 情動的訴えが強いアスリートには、安心を感じてもらわなければなりません。
    • 認知ー評価的側面 認知が現状と合致していれば大きな問題になりませんが、歪んだ認知状態にあるならば注意が必要です
  • 負の「意欲ー情動」的側面における表出が強く、ケガをしたことに対する気持ちの整理がまだついてない状態と推測されます。このような状態では、正確な医学的情報を提示しても、受け入れられる可能性は低いでしょう。最低限の医学的処置を行いつつ、愚痴を聞く、距離をおいて落ち着くまで待つなどの、気持ちのケアに気をつけていくことがよいと考えられます
  • 情動面に過剰に焦点があたってしまっている選手は、目の前の現実的な課題に目が向かなくなってしまう可能性があります。気持ちが落ち着く頃合いを見計らって、前向きな言葉を引き出すような対話が必要になってくるでしょう
  • 破局的思考
    • 痛みに対しての悲観的、否定的な情動や認知の一つの傾向
    • この傾向が強いと、痛みに過剰に注意がとらわれ、思考だけでなく行動までもがネガティブになりやすくなってしまいます。
    • 下位尺度 反芻、無力感、拡大し
    • これらの破局的思考が見て取れたら、まずは、その訴えが行動に寄り添うことが大切です。その際には、前回のコツのところで述べた中間的対応が効果的です
  • Bさんのように正しいことを伝えても認めない方は、自分が病気である部分にすがっていたいのかと感じることもあります。
  • 医療者は正確な情報を把握すべきですが、患者さんには必ずしも正確な理解を求めないこともあります。患者の認識や行動を強く否定するのは、それにより命の危険に関わる場合にだけにとどめています。
  • 医療者が原因で改善への障壁をつくらないようにしたいです