心身医学を専門とするわれわれが意識できる疼痛緩和

松岡弘道:心身医学を専門とするわれわれが意識できる疼痛緩和. 心身医, 57:124-137,2017.

  • ソンダースは苦しみには身体的な要素だけではなく、精神的、社会的、スピリチュアルな要素が影響していると考えた。さらに「これらが互いに影響し合い」、全体として苦しみを形成していると述べ、これらすべてをふくむ双胎として苦しみを捉えるべきであると指摘している
  • しかし、最近の緩和医療では、この「これらが互いに影響し合い」が忘れられ、分割された医療がおこなわれている場合もある
  • 患者の心理状態を把握する際には、精神的苦痛、スピリチュアル・ペインへの評価が必要になる
  • 具体的には、1病気の理解と意味、2痛みの理解と意味、3痛み治療の理解と意味、4コーピング、5精神症状の評価(不安、抑うつ、せん妄、不眠などの有無),6患者の心配事と未完の仕事、7生きる意味や生きがいなどである
  • この際ケミカルコーピングがないか、身体症状症やアレキシサイミアが疼痛に関与していないかも合わせて評価したい。これらの情報と客観的データと合わせて、痛みの原因やメカニズムを考え(病態仮説を作り)、治療方針を決定する
  • 自分の感情に気づくのが困難という傾向は、疼痛の強さに関連することが示唆されている(アレキシサイミア)
  • 痛み診療では、別の視点が必要で、「私は痛い」という痛みの表出は「助けて!}というサインであることを理解することが重要である。患者お「助けて!」に対する医療者の援助者としての意識の志向性が、患者の反応を呼び起こし、意識の相互作用から医療者ー患者関係が成立する。痛みなどの「特殊な状況」つまり患者の「人間らしさ」が失われつつある時、われわれがその人間らしさ(ユマニチュード)を特別に意識し、症んいんしなければ人間同士の関係とはならないことを再認識しておきたい
  • 難治性疼痛の病態を理解するためには、一方向性の「ものの見方」では解決できない点が数多くあり、一方向性の「ものの見方」に固執しない心身医学的アプローチが寄与できる点は非常に大きく、これらの学びを深めるには構造構成主義の考え方を取り入れてみたい