副反応と疑われた症状は何だったのか

石崎優子: 副反応と疑われた症状は何だったのか チャイルドヘルス 235(12):900-903,2022

  • 有害事象と副反応
  • 有害事象
    • ワクチン接種後に起こった好ましくない事象を有害事象と呼ぶ
    • これは接種後に起こるという時間的な関係のみで述べられ、因果関係は問いません。 例 交通事故
  • 副反応
    • ワクチンや薬物と因果関係がある、もしくは疑われるもの。
  • WHOの有害事象の分類
    • ワクチンの製品に関する副反応
    • ワクチンの品質の欠陥による副反応
    • 予防接種過誤による副反応
    • 予防接種の不安に関する副反応
    • 紛れ込み現象
      • 紛れ込みの候補の一つが、起立性不耐症の一つ、体位性頻脈症候群(postual tachycardia syndrome;POTS)
      • 日本では起立性調節障害として知られる
      • 海外ではPOTSは実に多彩な臨床症状を伴う
      • めまい、たちくらみ、動悸などの起立失調、ドライアイ/ドライマウス、吐き気、嘔吐、便秘、下痢、片頭痛などの非起立性の症状、また脳に霞がかかったような症状(brain fog)、各種の過敏性、痛み、睡眠障害などの精神神経症状、慢性疲労症候群と機能性胃腸障害
      • HPVワクチンの副反応を疑われた症状とPOTSの多彩な症状を比べると類似する点が多く見られる
      • 思春期女子に好発するという面でも紛れ込みが起こった可能性があると考えられる
      • POTSに関連するでコンディショニングという概念
      • 外傷が手術後なので長期に寝たきり状態になった跡に、身体活動の低下によって、筋力低下、骨粗鬆症、循環機能や呼吸機能などが低下することであり、循環器系デコンディショニングの代表が起立不耐症です。
      • POTSをデコンディショニングの関連も示唆されている
      • ワクチン接種後に痛み等によって身体活動が低下したことででに陥り、それが起立不耐症を悪化させるとも考えられます
  • HPVワクチン後の多彩な症状に慢性疼痛がある
    • POTSの症状としての慢性疼痛
    • 痛みで身体活動が低下して筋肉と関節の機能が低下しているときに運動すると、痛覚過敏によって痛みが更に悪化する。そして慢性的な痛みがあり、痛みが怖いために動くことを避けると、さらにでコンディショニングや過敏性を増悪させると考えられる
    • ワクチン接種後の副反応が疑われた症状が、身体活動の低下によって二次的に生じるでコンディショニングや痛覚過敏にかかわるのであれば、各種検査で炎症所見がないのにもかかわらず、種々の全身の症状が生じることも不思議ではありません。つまり副反応を疑われた症状は、HPVワクチンによる新たな症候群以外に起こり得ないのではなく、既存の概念で説明できると考えられます。