ストーリーで理解する痛みマネジメント7 痛みの評価(2)

永田将行, 江原弘之 ストーリーで理解する痛みマネジメント7 痛みの評価(2) スポーツメディスン 32 (9):41-45, 2020.

  • 痛みに対する認知と対処行動の偏りは慢性化に影響を及ぼします
  • インタビューでチェックするポイントは、"傷害の程度と訴え・行動との整合性"です
  • 毎回変化を観察し、ポジティブな変化にはしっかりとフィードバックを行い、ネガティブな変化には寄り添って見守っていきます
  • 痛み行動の背景には何らかの心理的傾向や信念があるかもしれません
  • 選手が現実に合わせた、"今、目の前の"、課題に集中できるように、環境を整備していきます
  • 心理的問題そのものが痛みを直接生み出すのではなく、あくまで痛みの認知やそれに伴う行動の偏りにより、行動までが変容し悪循環に陥ってしまっていると考えます
  • そのような経験は選手の人間的な成長につながるため、理想は必要最小限の介入です。大きく道を逸れていなければ、まずは見守り、本人の気づきを待つというスタンスは、忍耐が必要になります。介入者にもレジリエンスが求められます
  • 日常生活のチェック事項として、池田ら(2018)による慢性疼痛患者に対する地域・在宅リハビリテーションにおける考えが参考になります。慢性疼痛に関わる生活習慣として、1運動・身体活動と休養、2 睡眠 3 栄養・食事行動 4 排泄 5 ストレス 6社会的な関わり 7生活史 の7つを活用し、慢性疼痛を解釈するようにしています。
  • スポーツ選手は身体能力が高く、通常の姿勢では異常な知見が認められない場合があります。そのようなときは、中間的姿勢を確認すると良いでしょう。そのような姿勢で、痛みや過剰な代償が認められることがあります。安定性を優先して姿勢の偏りをつくりだし、痛みが引き起こされることがあります。
  • 身体評価における注意として、評価結果に過剰に負の意味付けを行わないことが挙げられます。とくに慢性疼痛においては、必ずしも評価結果が痛みの訴えと一致するわけではありません。訴えと評価が一致すればそれを改善していきますが、長引きこじれている場合には複合的に要因が絡み、身体運動機能の改善=痛みの解消、とならないこともあります。
  • マイナスの評価結果は「劣っている」部分ではなく、競技をより快適に実施するための克服すべき課題の一つとして考えていきましょう