寶珠山稔 慢性疼痛と皮質活動 Pain Research 36:42-48,2021
- 脳機能測定を用いた慢性疼痛評価の問題点
- 機能脳画像的解析でも神経活動の解析でも、計測時間や電極の数や脳領域の範囲によらず、記録された脳活動は疼痛に関するものではなく、記録された時間内に生じたすべての脳活動を含んでいる
- 慢性疼痛が生じている段階では、持続する不快感やうつ状態、疼痛に対する運動を含めた防御的な反応などが混在し、それらによる脳活動が重畳して記録される
- 個人と特徴づけるdefault mode netword(DMN)や脳全体の機能構築の基本となるlarge scale network(LSN)のいくつかが慢性疼痛によって変化することが報告されている
- しかし、それが慢性疼痛による変化なのか、持続する苦痛や精神心理的状態を反映する変化なのかを区別することは難しい
- 慢性疼痛が生じている患者の大脳皮質活動には、痛み関連領域およびDNMなどのLSNを構成する皮質領域の活動パターンに変化が生じている可能性が推察された
- 慢性疼痛が生じている状態では、疼痛関連脳領域には電流密度や周波数分布、connectivityといった量的な差が認められることに加え、DMNなど脳の基本的活動の枠組みとなるLSNの構成領域での活動の変化が生じている可能性があるとともに、LSNの変化はそれ自体、感覚認知や心理的反応に修飾を加える場合があるかもしれない