自閉症スペクトラム症と痛み

熊谷晋一郎 自閉症スペクトラム症と痛み Practice of Pain Management 2014;5(4):232-235

  • 自閉症スペクトラム症(ASD) 2つの特徴
    • 社会的コミュニケーションと社会的相互作用における持続的な欠損
    • 行動、興味、活動の限局的かつ反復的なパターン
  • 行動の原因を心理的状態に帰属させるモデル
  • 帰属的推論に対する二段階モデル

―貴族的推論の過程 はじめに同定(identification)、続いて帰属(attribution)という二段階を経て処理される

  • 同定
    • 他者の行動についての視覚的な情報入力から、それを引き起こした直近の運動指令や感情を推測する段階
    • 運動指令ー感情ー深部感覚ー聴覚ー視覚の連関パターン
    • 同定に必要な脳領域 ミラーニューロンシステム MNS
      • Haswell
          • ASD者の運動制御は、#1運動指令ー深部感覚フィードバック、#2 運動指令ー視覚フィードバックという2つの運動制御系のバランスが、依存度が#1>#2になっている
    • #1の依存度が高いほど、社会性が低く、運動模倣が苦手な傾向
    • 運動指令ー深部感覚ー視覚の情報等魚不全は、一部の神経障害性疼痛の病態としても注目されている
  • 帰属的推論 Default-mode network ; DMN と呼ばれる部位が担っている
  • 同定 自己の運動ー感情ー深部感覚ー聴覚ー視覚統合パターンを利用
  • 帰属 自己のこれまでの経験の相対である自伝的記憶を資源として活用
  • ASD児ではDMN内部の機能的まとまりが弱く、それが重症度と相関している
  • 慢性疼痛患者でもDMNの異常が指摘されている
  • 安静時DMN-島皮質結合が対照群と比較して更新
  • 同定段階に利用される非陳述的な運動ー感情ー深部感覚ー聴覚ー視覚情報の統合不全や、帰属段階に利用される陳述的な自伝的記憶の統合不全が、ASDや慢性疼痛の両方を説明する可能性がある
  • さらにこれらの情報統合には、健全な睡眠が重要である