ニューロイメージングと身体症状症 精神医学 2020;62(12):1587-1596
- 身体症状症ではこれまでの脳画像研究から、体性感覚野のような痛みの感覚に関連のある脳領域というよりも、前頭前皮質、島皮質、前帯状皮質、扁桃体、海馬、大脳基底核といった感情、認知、行動と関連する脳領域の機能異常があきらかになっている。よって痛み感覚の異常というよりも、痛み感覚に対する認識(破局的思考など)、感情(不安、恐怖、抑うつ)、回避的行動(ひきこもりなど)が病態に影響している可能性がある
- 痛み関連領域
- 身体症状症において痛み刺激時と認知的なストレス課題時で共通した脳領域の活動(上側頭回)がみられており、Stoeterらは痛み体験と認知的なストレス体験が身体症状症において重複している可能性を指摘した
- 身体症状賞では生活でのさまざまなストレス状況(例:夫への不満など主に対人場面での状況)において、その時の自分自身の感情を明確に認識する能力に欠けており、感情的ストレスを身体症状として表出しやすいと言われている
- de Greekらは表情提示時の脳活動の減少は、身体症状症におけるさまざまな感情的ストレスに対する反応減弱と関連しており、対人関係で葛藤を抑圧するという身体症状症の成因と関連付けている
- 身体症状症において特異的に右背外側前頭前皮質の活動低下が見られており、さらに同じ領域の右背外側前頭前皮質と視床との機能的結合が身体症状症のみで有意に低下していることが明らかになった。右背外側前頭前皮質と視床との機能的結合は痛みの抑制経路として重要であると以前から報告されており、身体症状症における特異的な右背外側前頭前皮質の活動低下および同領域と視床との結合性低下は身体症状症の病態を表している可能性が示された
- 怒り表情の提示時における海馬傍回を含めた脳領域の低活動が治療により正常化していた。彼らは怒りを抑圧することによって生じていた身体症状が、治療によって抑圧の軽減とともに身体症状の改善がみられるようになり、そのメカニズムとして海馬傍回が関連している可能性を明らかにした