- 集眉の問題は、不安、悲嘆、恐怖、ストレスなどが慢性疼痛にどのような影響を及ぼすのか、回復に至る道順はなにかを探ることである
- あらためて慢性疼痛の病像を整理すると
- どの慢性疼痛の場合でも、賦活される神経核の多くは辺縁系や大脳基底核など、古い皮質である。
- fMRIを見ての疑問
- 慢性腰痛ではなぜ辺縁系が賦活化されるのか
- 健常者の脳では、痛みを感じているにもかかわらず、なぜどこにも賦活部位がみられないのか
- 脳機能解析の問題点と限界
- 末梢の体性感覚情報を上位脳に送る感覚投射系は新旧2通り
- 遅い体性感覚投射系
- 速い体性感覚投射系
- 系統発生的に新しい脊髄視床路など。局在のはっきりした、鋭くて速い痛みを伝える
- 中脳辺縁系 mesolimbic dopamine system
- 腹側被蓋野VTAから側坐核NAcや、腹側淡蒼球VP、前頭皮質PFC,扁桃体Amygなどへ軸索を伸ばしているdopamine 回路をいう
- 心理学分野では、「報酬回路」とか「快の情動系」と呼んでいる
- 体のどこかに痛み刺激が加わると、VTA neuronに高振幅の活動電位の群発射が起こり、軸索の先端から、側坐核や腹側淡蒼球にむけてdopamineが放出。Dopamineが側坐核neuronを興奮させると、opioidが分泌されて痛みが抑制
- 健常者の場合は、痛みの大きさに応じてdopamineも多く放出されて、痛みが抑制される。そのお陰で、私たちの痛みは現在この程度に抑えられている
- 線維筋痛症では、痛み刺激を加えた際のdopamine量の放出が少なくて、痛みに見合う制御ができないとがわかった。もうひとつ特徴的なのはdopamineのtonicな異常な放出が見られることであった
- dopamine分泌にはphasic activityとtonic activityの2通りあるが、痛みを抑える効果があるのはphasic activityの方である
- 心配事や不安、ストレスがあると、海馬からの入力が大きく、tonic activityを増加させる。このような状況では、大きな痛み刺激が体に加わっても、それに見合うだけのphasic dopamine分泌が得られず、痛みは抑えられない
- ストレス鎮痛 ストレスにより側坐核、扁桃体、前帯状回、前頭皮質、視床などからopioidが分泌される
- placebo鎮痛 これから痛みを加えると予告しておいて、実際には痛みのない非侵害刺激を加えた時でも、側坐核、扁桃体、帯状回などからopioidが分泌される
- Dopamine&opioid systemによる痛みの制御は、もともとは進化の過程で、捕食者に襲われて、怪我をしながらも逃げて生き延びるための系として発達したと考えられる
- Motivationと快不快の中枢 腹側淡蒼球 ventral pallidum
- 腹側淡蒼球 側坐核の隣にあって、互いに連絡しあう小さな神経核 意欲や快楽を左右する神経核、快の情動系、ペダル踏み実験の中心をなしている
- 腹側淡蒼球 後部 小さな快のhotspot 前部 不快のcoldspot
- 腹側淡蒼球が障害された症例 認知機能は障害されなかったが、快感喪失症anhedonia, major depressionと診断され、意欲の低下、集中力の低下、感情鈍麻、卑小意識、罪悪感に苛まれるようになる。慢性腰痛のほか、安静時の震えや、下肢の固縮もみられる
- 腹側淡蒼球は、腹側淡蒼球-視床下部-視床-帯状回-前頭皮質を結びつける大きなループと、中脳の結合腕傍核(脊髄からの感覚性情報を中継する)や、運動系を連絡する位置にある。そのため、腹側淡蒼球の活動は、認知機能や、感情や記憶、運動機能など、脳の広範な神経核とその機能に影響を与える