牛田享宏、野口光一、細川豊史、田口敏彦、高橋和久、住谷昌彦、菊地臣一:心因性疼痛を考える:養護としての認知性疼痛の提案. PAIN RES, 33:183-191,2018
- 痛みの強さや痛みの顕示行動は、痛みの原因とは関係なく、いずれも心理社会的な精神的ストレス要因によって修飾されうる
- 医師から、「手術手技には問題が無かったから、心因性のいたみでしょう」と言われると、患者によっては、痛みを感じるのは「気のせいだ」とか、「精神がおかしいからだ」といわれているように感じるかもしれない
- 患者と医療従事者との間に信頼関係があるほど治療成績は向上する
- 痛みの理解を浸透させるには、「心の問題」を想起させる用語ではなく「脳の問題」であることを感覚的に捉えやすい用語を用いたほうが適切ではないかと考えられる
- 本稿では第3の疼痛の名称として、新たに「認知性疼痛」との用語を提案したい
- 治療成績の向上には患者と医療従事者との間の信頼関係が不可欠であり、それを損なう言葉は用語として適切ではない。つまり、患者が健康を回復する方向性にとって望ましい用語でないと第3のグループに対して呼称を新たに提案する意味がないのである
- 認知性疼痛の定義は後述するが、医学的には、身体認知失調性疼痛あるいは精神機能失調性疼痛のほうが、概念の表現としては適当であるように思われる
- 脳のオーバーアクティビテイ(過剰な神経興奮)やハイパーセンシティビティ(痛みに対する過剰な感受性の亢進)の結果として痛みを知覚しているという病態であり、「脳内で痛みが生じ、その痛みを過剰かつ過敏に認知するようになって認知性疼痛と考えれば理解しやすい
- 前提として、認知性疼痛は原因論的な痛みの病態を定義した侵害受容性疼痛や神経障害性疼痛とは次元の異なる概念であり、それ自体が疾患名という訳でなく、痛みに病態の一つとして捉える必要がある
- 重要なのは、認知性疼痛が生じているということは、何らかの変化(異常)が脳に生じている可能性があるということである