痛みの鑑別 内臓疾患?筋骨格系疾患?

岸本暢将 痛みの鑑別 内臓疾患?筋骨格系疾患? レジデントノート 2012;14(13):2445-2449

  • ベイツ診察法に疼痛(pain)が5番目のバイタルサインと記載があります。
  • 体性痛は限局した鋭い痛みで、痛い部分を尋ねるとはっきりとその部位を指せる痛みです。代表的には表在部位であれば皮膚粘膜障害、深在部位であれば筋骨格障害からくる痛みがあげられます。
    • 痛み刺激はAδ侵害受容線維の興奮によって生じる局在がはっきりした”速い”痛み(鋭い刺すような痛み)がメインで、引き続いてC侵害受容線維の興奮によって生じる局在がはっきりしない鈍く、灼けつく、”遅い”痛みが生じます
  • 内臓痛は、大部分がC侵害受容線維の興奮によって生じる痛みで、体性痛に比べ局在がはっきりせず、鈍く性質のはっきりしない痛みです
  • 関連痛は、原因部位から離れた部位に感じる痛みで、原因臓器の求心性の痛み刺激が、同じ脊髄後根神経節にある皮膚神経も刺激してしまい、その皮膚表面が痛いと感じるような現象です。
    • 性状としては内臓痛に近く局在は明確でないことが多いです。例えば、横隔膜の痛みの求心刺激はC3あるいはC4レベルの脊髄後根神経節に伝わりますが、急性膵炎では左肩が痛くなったり、胆嚢炎や肝臓疾患で右肩が痛くなったりするのはこのためです。また心筋梗塞で肩(左/右または両側)に起こる関連痛も有名です。
    • これらの関連痛と肩自体の病変からくる痛みは、肩自体の病変では運動痛があり、可動域制限を伴うことで区別されます。

齋藤兄治 救急外来に腰痛患者が来て、「ブロック注射をしてほしい」といっています。 レジデントノート 2012;14(13):2467-2473

  • 医療面接、身体所見で大事なのはred flagを見逃さないことです。
    • 筋骨格系の疾患でも、両側性の下肢麻痺や膀胱直腸障害があれば硬膜外圧迫症候群を疑い、肛門周囲や会陰部の感覚麻痺や膀胱直腸障害、肛門括約筋弛緩などがあれば馬尾症候群を疑い、緊急手術となることもあります。
  • トリガーポイント注射
    • 治療効果のエビデンスはありません。しかし適切な部位に注射すると数分以内に効果があります。