住谷昌彦、真下節 痛覚の生理 痛覚と痛みの認知 医学のあゆみ 2005;215(8):709-715
- 痛みの定義
- An unpleasant sensory and emotional experience associated with actual or potential tissue damage, or described in terms such damage (組織の実質的または潜在的な障害と関連したあるいはこのような障害と関連して述べられる不快な感覚的・情動体験)
- 痛覚(痛み)系は非常に未分化であり、可塑性に富んだ系である
- 痛みの神経機構
- 侵害受容器と侵害受容線維
- 脊髄後根神経節
- Nav1,8が疼痛と密接に関与する可能性が示唆
- DRGニューロン内で侵害刺激によって細胞内情報伝達系のひとつであるMAPキナーゼのファミリーであるERKのリン酸化が誘導され、末梢性感作が生じ痛覚過敏を起こすことも示されている
- 脊髄後角
- 侵害受容ニューロンは主に第I,II,V層に分布する
- 神経損傷後疼痛では触刺激などの非侵害性情報を伝える線維 Aβが軸索発芽をおこし、その線維を第II層にのばす現象がしられている。この現象はアロデニアの発症機序として注目されたが、最近ではその方法論から御紋がもたれている
- windup現象
- ERKの活性化による神経活性物質やその受容体の発現増加が痛覚過敏やアロデニアに関与していることが示された
- 脊髄視床路
- 視床
- VP 後腹側核 体部位局在がみとめられ、痛みによってその局在が再構築することも知られている
- 大脳
- 小脳
- その他
- 前頭前野(prefrontal cortex) 痛みに対する注意によって活動性が変化することや痛みの予期と強い相関を有することが知られ、前頭眼窩回も感情と密接に関連して痛み認知を修飾することも知られている。
- 痛みのクロスモダリティ
- 痛みを恐怖に感じる被検者群では先行疼痛刺激に対する注意がより強くあらわれることが示され、痛みは痛覚だけでなく情動のコンポーネントが組み込まれて認知されていることの傍証といえる
- おわりに
- 痛みは痛覚だけでなく情動の側面もあり、痛覚伝達機構の研究だけでは治療には結びつかないことが多い
- サイドメモ
- 感覚と知覚の違い
- 感覚sensationは外界からの刺激が感覚器官や神経組織を通じて取り入れられる過程をさす。対して知覚perceptionは感覚を通じて得られた情報を基にして過去の経験などを照らし合わせて判断したり考えたりする過程をさす。
- つまり感覚情報に判断や思考(考え)が含まれるとき、それを単なる感覚とわけて知覚と呼ぶ
- 侵害受容器を介して入力される痛覚は感覚であり、痛みは感覚であり、情動でもあるので、知覚である。
- 痛みは侵害刺激なくとも起こりえる