筋肉痛の痛覚受容機構

川喜田健司、伊藤和憲、岡田薫 筋肉痛の痛覚受容機構 理学療法 2001;18(5):469-474

  • 筋肉痛の特徴としては、皮膚の痛みに比べ局在性や弁別性が悪く、多くの場合、関連痛や自律神経反応を伴ない、筋収縮や筋血流とともに密接に関連している
  • このような筋肉痛は、筋組織に分布する侵害受容器の興奮によって生じるが、臨床上問題とされる筋肉痛の多くは、単純な侵害受容器の興奮によるものばかりではなく、慢性炎症や組織障害によって生じた
  • 末梢性および中枢性の痛覚受容機構の可塑的変化がその原因となっている可能性も高い
  • 筋の痛覚受容器
    • ポリモーダルタイプの性質を持つ 機械刺激、熱刺激、化学刺激(発痛物質)といつ多様な刺激にいづれに対しても反応する
    • さまざまな生理活性物質に感作されやすいため、侵害刺激に対する反応の再現性がわるく、正確な痛覚う応報を伝える目的には適さない
    • 皮膚にくらべて筋組織での分布密度は極めて低い
    • 投射をうけるニューロンの多くが、皮膚、関節、他の筋からの入力をうける収束ニューロン(convergent neruron)である
    • これらのことが筋肉痛の局在性や判別性の悪さ、関連痛雨の生じやすさをもたらすと考えられる
    • 侵害刺激に対する感受性増大の原因としてのサイレント侵害受容器 機会刺激に対する反応性が、炎症などの病態時に出現する 筋での存在は証明されていない
  • 臨床的によく認められる筋肉痛の機序としてわすれてはならないものに関連痛がある
  • Kellgrenはヒトで6%の高張食塩水を筋内に注入し、注入部位とは離れた部位に関連痛が生じること、また注入部位によっては関節痛、歯痛、頭痛などと区別できない関連痛が生じることを明らかにした
  • 内蔵疾患によって反射性に筋緊張や筋肉痛が生じることも臨床的には古くから知られている。これらの関連痛としての筋肉痛は、脊髄収束ニューロンへの内蔵入力を上位中枢が筋組織のものと誤認すると考えられている。しかし、単純な収束ー投射というのではなく、脊髄における興奮性の変化(中枢性感作)も考慮するべきであろう
  • trigger pointの成因 組織損傷による末梢侵害受容器の感作、索状硬結に関しては筋小胞体からのカルシウム漏出による筋拘縮とされてきたが、近年終板の異常興奮を原因とする説もある。我々は、遅発性筋痛を限局した筋に作成するとtrigger point様の部位が発現することから筋損傷による末梢侵害受容器の感作が重要であると考えている
  • 線維性筋痛と筋筋膜性疼痛症候群には圧痛閾値の低下という共通点がある