理学療法 痛みの病態生理学7

井上秀和 最近の知見から:痛みとグリアの働き 理学療法 2008;25(6):959-966

  • これまでの研究対象は痛みを伝える神経細胞がメインであった。その一方で、神経因性疼痛も出る動物の脊髄後角においてグリア細胞の形態変化などの活性化が生じていることに気づく研究者が出始めたが、それらがなぜ、どのように神経因性疼痛に涵養しているかは不明のままであった。
  • グリア細胞 アストロサイト、オリゴデンドロサイト、ミクログリア
    • アストロサイト 神経細胞への栄養補給や老廃物の除去
    • オリゴデンドロサイト 神経伝達効率の向上
    • ミクログリア 脳内免疫の担当
  • 筆者らの提唱した仮説、すなわち活性化ミクログリアとATP受容体サブタイプP2X4の深い関与がscience誌のnews focus欄上で紹介された。
  • P2X4受容体と神経因性疼痛
    • 筆者らは神経因性疼痛病態モデルをもちいて、神経損傷により脊髄内ミクログリアが非常に活性化し、そこに過剰に発現誘導されたP2X4受容体が刺激されることによりアロデニアが発症することを明らかにした
    • 介在ニューロンから放出されたGABAが病態の2ニューロンへ作用すると、その作用は抑制的でなく逆に興奮的になり、脱分極を引き起こしてしまい、最終的に触刺激が痛みとなるアロディニア状態を呈する
  • ミクログリアは初期病変に関与し、アストロサイトはその後の病変に関与するという考え方がある
  • 人類の資産である既承認医薬品から新薬候補を見いだす試み エコファーマ
  • 筆者らは、三環系、四環抗うつ薬SSRIパロキセチンが著明なP2X4アンタゴニスト作用や鎮痛作用を持つことを最近明らかにした
  • パロキセチン有効例ではミクログリアの活性化やP2X4受容体の過剰発現が起きていたことがあるかもしれない。
  • なおポロキセチンン抗うつ作用の主作用点セロトニントランスポータであるが、パロキセチンのアロディニア抑制作用への影響については動物実験ではほとんど関与しないことが著者らの実験で確かめられている。また臨床でのパロキセチンによる神経因性疼痛抑制効果は抗うつ作用によるものではないだろうと推測されている。