- 従来の認知行動療法では、痛みを過度に否定的なものと捉え「破局視catastrophizing」する認知行動的プロセスに焦点を当て、1痛みに対する耐性の向上、2痛みのある生活の受容およびその自己コントロール感の向上、3日常生活の行動範囲の拡大、4社会生活への適応の改善といった要素がプログラムに組み込まれている。痛みを適切にコントロールすることが目標とされてきた
- しかし、思考や感覚の抑制は、かえって皮肉な結果をもたらくこともある。痛みのある人生を憂い、それをコントロールしようとすることは、ともすると痛みを増悪させることになりかねない
- 痛みの心理的介入の本質は、痛みをコントロールすることよりも受け入れ、痛みとともに生きるスタンスを手に入れることにあるはずである
- 最近注目さえる第三世代の行動療法(認知行動療法が第二世代)は、こうした発想から生まれた。そのキー概念として注目されるのがマインドフルネスである。
- マインドフルネスとは、「今ここ」での経験に評価や判断を加えることなく注意を向ける注意の在り方と、受容的に開放的に経験と向き合う心的態度を可能にするこころのモードと定義される。中心的技法は瞑想。
- 特に慢性疼痛のための認知行動療法プログラムはm、McCrackenらによるものが有名である。Acceptance and commitment therapy(ACT)をベースにおいたこのプログラムの目標は、「コントロールこそが問題」であることに気づくこと。痛みを抱えながらもそれにとらわれず、自分の人生に価値を見出して生活することにある。
- 治療経過
- 「痛みは悪者→逃げる/退治する」というパターンが多くの人に見られたため、痛みを「あまり歓迎はできない自分自身の特徴の一つ(例えば足が短いなど)」と捉えてみることについて議論した
- 指導者の「痛みのことばかり気にするのは、「自分」の人生を無駄にしている」という言葉に感銘を受けたようだった
- 「当初私は、“痛みが取れるなら参加しよう”と思っていましたが、指導者から、“痛みをとるのではなくつきあうための方法”といわれ驚きました。痛みは、「痛みをもった自分をみつめることならできるようになったと思います。“この痛みは自分の個性だ”と思えれば、不可能と思っている飛行機旅行などものできるようになりそうです。
- 「痛みをとることにこだわる」視点が「痛みがありながら生活を楽しむ」視点に変化し、結果的に痛みの軽減をも手に入れることとなった
- 痛みそのものよりも、「人生を台無しにされた」恨めしさこそが、痛みへのとらわれを生じる根本であることを、支援者は常に念頭に置くべきであろう。
- 瞑想は、自分自身の内面と向き合い、そこから直接的に気付きを得ることができるという得難い利点がある。その経験のなかで、逃げている自分、いい訳をしている自分にダイレクトに気付き、その経験を相互にシェアする。これは、機能分析的心理療法でいうところの「臨床関連行動」を扱うことにほかならず、行動変容の必要条件といえる。