大学生アスリートの腰痛に対する認知行動療法 

小堀修 一月三舟でも要はGOAL:大学生アスリートの腰痛に対する認知行動療法 Monthly book medical rehabilitation 2011;138:17-24

  • Hansenらは、腰痛を慢性化させるリスクファクターに働きかけるBack Skills Training Trial(BeST)を開発した。リスクファクターとは、破局視、受動的対処、恐怖回避、活動レベルの低下、そして過活動であった。破局視とは、小さな躓きがあると「もうだめだ」と絶望したり、よくないことが起こるなら「最悪の事態になる」と考えたりすることである。このためBeSTでは、以下の4つを目指している
    • 活動レベルを高めること
    • 過活動を管理すること
    • 破局視と恐怖の回避を低下させること
    • 対処スキルを高めること
  • 特に対処スキルを高めることは、自己コントロール感を高めることを目指している。言い換えれば、「自分で自分の問題(=腰痛)を解決できる」と感じられることで、「もう何をやってもだめだ」という絶望感を低減させることができる
  • 他の選手に比較して「あれもできない、これもできていない」という考え方から、「あれもできる。これもやってみよう」という考え方にシフトする可能性がある
  • 回復の程度を数値で見積もらせることは、治癒―故障というシンプルな二分法に陥ることを防げたかもしれない
  • 選手のソーシャルサポート感(自分以外の誰かに支えられている感覚)を高めたり、選手が自分自身の身体的状態・心理状態を捉え直したり、受傷に対する認知を変容することに効果的だと考えられる
  • 「誰かが見守ってくれること」は、不安、孤独感、孤立感などのストレス反応を抑制することができ、「この人が応援してくれているのだから」と思えることは、絶望せず、根気よくリハビリを続けていくことを可能にするだろう。
  • その他の援助方法
    • 有名選手の自伝を読む ロベルト・バッジョ
    • リスクファクターの特定と再発防止計画
    • 気分の改善
      • アスリートには「やるべきことは完璧にやらなくてはならない」という完全主義が多く、ケガをしたあとも「何かを一生懸命やらなければならない」と思ってしまう。その結果、回復に見合わない強度の練習に取り組んでしまい、回復を妨げてしまうことがある体系的なリハに取り組ませ、気分も改善してくると、「自分は何かをやっていないと焦ってしまう性格だったが、今では回復を気長に待てるし、回復を楽しめるようになった」という語りが聞けることがある
    • 周囲の人への働きかけ