横山敏勝、小山なつ、平田和彦 ニューロパシーの病態生理 日本ペインクリニック学会誌 1996;3:383-391

  • 阻血解除後の痛み
  • 血圧計のマンシェットを膨らませて、腕を約20分間阻血すると、阻血された神経に含まれる神経線維が太いものから順次興奮伝導を停止する。
  • ここで空気を抜くと、2,3秒の後、手に温かい感じあるいは熱い感じが始まり、約一分間続く。これは皮膚温上昇による温覚である
  • 阻血を解除してから約30秒たつとジンジンビリビリ感が指先にむかって間欠的に走る。
  • 阻血を開始してから約一分たつと、”buzzing”を感じる。Buzzingは手や指のいくつかの場所に現れる振動感覚でほとんど休みなく続く。阻血解除2分目で最高になり、次第に弱まる。Buzzingとほぼ同時に”pseudocramp”を感じる。場所ははっきりしないが、手の深部に連続的な圧迫感がある。筋電図はほとんどでていない。
  • 圧迫解除後2−3分で、この感覚pseudocrampが優位になる
  • やがてbuzzingが消えて、再びジンジンビリビリ感が優位になり5−15分続く。刺す痛みは指と手の掌側に現れるが、ジンジンビリビリ感は指先に限局している。
  • 正中神経に微小電極を刺して電気活動を記録すると、最初のジンジンビリビリ感の出現に伴って、間欠性の群発波が現れる。2分目に入ると、神経活動が激増し、それが頂点に達する頃、刺す痛みが現れる。以後、神経活動は次第に弱まるが、群発波が目立ってきて、ジンジンビリビリ感が続いている限り群発波が続く。
  • マイスナー小体 触覚、低頻度振動感
  • パチニ小体 くすぐったい感じと高頻度振動感
  • メルケル触板 圧覚
  • AδとC線維の自由終末 痛覚、冷覚、かゆみの感覚受容器
  • ルフィニ小体をもつ求心性線維の電気刺激は、感覚を生じない
  • 自由終末を除いた感覚受容器のすべてがAβ線維に支配されている
  • 阻血解除後のジンジンビリビリ感はメルケル触板をもつ求心性線維とマイスナー小体をもつ求心性線維の群発発射、buzzingはパチニ小体をもつ求心性線維の群発発射、刺す痛みはAδ侵害受容線維の興奮によって生じる。
  • 一般に異常感覚が間欠的に走るとき、群発波が出ている。痛みの場合にはビーンと走るように感じる。これがshooting painである。群発波は局所麻酔薬リドカイン、抗不整脈薬メキシレチン、抗てんかんカルバマゼピンとフェニトインなどNa+チャンネルブロッカーの全身投与で抑えられる。