福井聖 慢性疼痛患者のMR spectroscopyについて 麻酔 2004;53:S183-S190

  • MR spectroscopy;MRSとはMRI装置を用いて、代謝物質を非侵襲的に測定する方法。そのなかでもプロトンMRS(1H-MRS)は、体内組織にふくまれる水素原子が共鳴することで発生する電磁場を測定する方法で、非侵襲的な神経機能の評価法として臨床応用されている
  • NAA(Nアスパラギン酸)は神経細胞内に特異的なアミノ酸であることから、NAAの低下は神経細胞の変性、障害、軸索障害などを意味し、神経機能の指標とされている。
  • 最近まではNAA/Cr比の値が神経活動の指標として臨床応用されてきた。
  • 最近は1H-MRISでのNAA(Nアスパラギン酸)濃度の絶対値を測定することが可能となった
  • 考察
    • これらの結果から、1神経因性疼痛では、対側視床の機能的変化の関与が大きく、同側の場合もある 2 NAA濃度の値で、視床の神経機能の障害程度がわかるとともに、治療効果もある程度予測がつく可能性がある 3 NAA濃度の低下が著明な患者は治療に抵抗性である可能性がある と考えられた。
    • 視床の神経活動が低下するメカニズムは、1持続的で慢性的な痛みが抑制系を活性化し、視床に機能を抑制すること、2慢性的な視床からの入力が大脳皮質感覚野の易興奮性を引き起こし、視床の神経活動が軽度でも痛みを引き起こすこと、3病的な痛みが、脊髄視床路以外の伝導路を介して伝達している可能性などが考えられた
  • 慢性疼痛では情動的な要素が多いため、今後は視床の他に、辺縁系、大脳皮質感覚野、前頭葉について、他領域で同時に研究を進めていく必要があり