器質的疾患と慢性痛との関係

北見公一 器質的疾患と慢性痛との関係 日本臨床 2001;59(9):1768-1772

  • 痛みは急性痛であろうと慢性痛であろうが、器質的すなわち身体的側面と、心理的すなわち精神的側面を必ず持ち合わせている
  • 著者は原因不明とされる慢性痛の器質的原因として筋筋膜性疼痛症候群(myofascial pain syndrome;MPS)という疾患が重要であると考えている
  • 大半の慢性痛は器質因と心因の混合物である
  • Simon 1990による筋筋膜性疼痛症候群の診断基準
  • MPSの臨床像には末梢の神経筋接合部や運動終板などの病理の他に、心気症傾向や非合理性などの心理的要素が関係しており、臨床的にはこの心理的要素を十分考慮して治療する必要がある
  • MPSの診断根拠となるのは筋肉の触診所見、つまり圧痛点(trigger point;TP)の存在、筋肉の索状硬結、関連痛などである
  • MPSにはTPという特徴的病理が存在する。TPとは、骨格筋線維内に触れる索状硬結にみられる痛点のことである
  • TPには痛点sensitive locusが多数存在することが提唱されている。痛点は一つまたはそれ以上の侵害受容神経終末を含んでいると思われる。痛点の機械的刺激は局所けいれんを引き起こし、しばしば特徴的関連痛を伴う。理論的には痛点は体内のどこの骨格筋にも存在するが、通常はTPがしばしばみられる終板領域近くに最も集中的に存在している
  • TPの発生には末梢神経終末(運動終板)の障害が関係しているとされる。つまり、MPSは局所性neuropathyであると考えられている
  • MPS群は有意に自分の病気を判断するのが不正確で、自分達の病気を医者のいうよりもっと重篤に違う病気であると考えられてきた
  • MPS群はより治療に満足しておらず、医師とのコミュミケーションが不十分だと訴える傾向があった