北原雅樹 筋筋膜性疼痛症候群 80(7);873-877

  • MPSとは、「骨格筋の中の筋性のトリガーポイント(trigger point;TP)に起因する感覚・運動・自律神経系の複合的症状」と定義されている。
  • TPとは、「骨格筋またはその筋膜の索状硬結(taut band)内にある極めて過敏性の高い点。圧迫することで痛みを生じ、特徴的な関連痛や圧痛や自律神経症状を起こす」と定義される。一般的には、“筋肉痛”とよばれ軽視されてきたが、実は様々な痛みの要因であることが近年認識されてきている
  • TPの成因の詳細は不明である。現在妥当性が最も高いと考えられているのは、筋や腱への急性・慢性の過負荷による障害が運動神経終板の活動性を高め、それによってアセチルコリンが持続的に放出される。それがTP近傍にみられる筋の過緊張を起こす。その状態が継続すると低酸素状態となり、血管作動性物質、炎症性物質、発痛物質が放出される。すると、さらに組織の過敏性が高まり局所の自律神経反応も起こる。という理論である。
  • しかし、TPは筋や腱への障害後だけでなく、内臓疾患、代謝性疾患、感染、心理的病態からも起こることが知られている
  • TPやMPSの基礎病態の詳細が不明であり、かつMPSの診断基準さえも必ずしも確定していないため、MPSに対する根治療法はなく、対症療法や補助療法が中心となる
  • 慢性的なMPSに対しては、他の慢性疼痛疾患と同様に薬物療法の効果はあまり期待できない。一方、MPSに特異的に効果がある治療法としてトリガーポイント療法がある