痛みのトップダウン機構. 脳機能画像:研究から臨床、痛みから意識へ.

大城宣哲、溝渕知司:痛みのトップダウン機構. 脳機能画像:研究から臨床、痛みから意識へ. LiSA, 19:478-483,2012.

  • 痛みには視覚に対する視覚野のような特異的な領域はみつかっておらず、多くの領域(視床、体性感覚野、島、前帯状回前頭前野など)が同時に活動するため、ペインマトリックスと呼ばれている
  • 前頭前野ー痛みの認知、前帯状回ー情動や注意、右頭頂葉ー空間認知気、島前部ー情動
  • 49度の熱刺激から50度に一度だけ温度を上げて、再び49度に下げる。このとき痛みの強さが例えば8から9に上がり、再び8に下がるかというとそうではない。ほとんど0近くまで下がってしまう。これがオフセット鎮痛
  • 痛みの下行性抑制系
  • オフセット鎮痛 fMRIで下行性抑制系にかかわるとされる中脳水道灰白質や青斑核、大縫線核(吻側延髄腹内側)などに活動がみられた
  • 2001 ワシントン大学 Dr Raichle
  • default mode network
  • ぼーっとして何もしないときに活動している領域(内側前頭前野、楔前部・後帯状回、下頭頂葉小葉など)
  • 慢性腰痛や線維筋痛症などで、default mode networkをはじめその後みつかったいろいろな安静時ネットワークに変化が起きていることが報告されている
  • 意識レベルが低下するにつれてdefault mode networkの機能的結合が低下
  • Alzheimer型認知症では、健常者と患者の安静時ネットワークの違いが多数報告され、認知症の早期発見につながるものと期待されている
  • 痛みの場所の識別している時の脳活動 S1,S2には活動なし、かわりに内側系で情動や認知にかかわるとされている前頭前野や前帯状回、そして空間認知にかかわるとされる右後部頭頂葉
  • 痛みの強さの識別を行っている時の脳活動 S1,S2に活動なし 内側系とされる前頭前野や前帯状回、さらに痛みの質や情動にかかわるとされる島の前部に活動あり
  • 新しい痛みの識別モデル
    • 識別の対象で経路が分かれる
    • 場所の識別では、前頭前野トップダウンで前帯状回(注意にかかわる)に指示、右頭頂葉(空間認識にかかわる)が体性感覚野にボトムアップで登ってきた情報を選別して上位中枢に送る
    • 強さの識別では、前頭前野・前帯状回が島(痛みの質や情動に関与する)を経て、体性感覚野で痛みの強さに関する情報を選別する
  • 脳疾患患者の痛覚失認
    • これまで島の病変が痛覚失認を起こすという論文が信じられてきた
    • 被殻の病変患者で、痛み刺激に対する痛覚低下がみられた
    • 脳機能画像などで脳の研究が進んだことで、今まで知られていなかったトップダウンの痛みの調節機構が徐々に明らかになっている
  • pharmacological fMRIと術中fMRI:鎮静・鎮痛と麻酔

デフォールトモードネットワークのなかでも特に楔前部は意識のハブ的な役割をする可能性が指摘されており、とても興味深い