- IASP 痛みの定義 痛みとは組織の実質的あるいは潜在的な障害に結びつくか、このような障害を表す言葉をつかって述べられる不快な感覚・情動体験である 1994
- 痛みには不快な情動成分があり、そのことに関しても言及している定義であることが注目に値する。
- 大脳皮質は痛みの感知するのみならず、外界からの情報に基づき、痛みの予期、思考、動機付けおよび感情の統合を行って、疼痛体験を多様に調節制御することがわかってきた
- 帯状回切除術をうけた患者は、侵害刺激の局在、強度や質の理解は変わらないが、痛みがあっても不愉快でなく、気にならないという変化が起こる
- 痛みを伝える2種類の情報
- 痛みと前部帯状回
- 前部帯状回は機能的に2つに分けられる
- あのひとに会うと「ホッとする」という状況での痛みの改善効果の医学的理解につながり、個人にとって不快な環境を整備しなければ、痛み治療が成功しがたいことが理解されるであろう
- 痛みがおこるのではないかという予期により結果的に痛覚閾値が低下する(=痛覚過敏がおこる)こととなり、臨床的な現象を説明するエビデンスとして興味深い。
- PETを用いた研究で、予測不能で学習されていない痛み刺激の予期は、右の前部帯状回、前頭前野の腹内側部、中脳中心灰白質を活性化させるが、痛み刺激が学習されると前部帯状回や前頭前野の腹内側部の活性度が低下するという報告がある。これは痛みが学種される前に注目し、警告反応としての痛みを不快に感じる必要があるが、痛みが学習されると注目を減じる(気晴らしを行う)ことが認知的な対処法、つまり適応戦略として合目的的であることを考慮すると興味深い生体反応といえよう。
- 心療内科における慢性疼痛の治療では、「痛みはあっても気にならない状態」を目指し、個人のQOLの改善を指標にして、症例ごとに多面的な治療をおこなっている
鈴木一郎 中枢性疼痛と帯状回 Clinical Neuroscience 2005;23(11):1280-1282
- 感覚情報経路
- 痛みは、識別、情動、認知の側面があるが、大脳辺縁系に属する前帯状回は情動的側面に関わっている
- PET MRI study 痛み刺激により、前帯状回、視床、頭頂葉(SI,SII),島回などで血流が増加することが明らかにされている。Rainvilleらは、催眠術により前帯状回(Brodmann 24野)の痛みに対する脳血流の反応性は大きく変化するが、SIでは変化が認められないことをあきらかにした。この事実からも、前帯状回は痛みの浄土運関与していると理解される
- 幻肢の痛み感覚は視床、前帯状回、外側前頭前回の活動と関係。患者の主観的な痛みの程度と有意に相関しているのは帯状回の活動のみであると報告。
- 前帯状回に関する限り、痛みの種類を問わず、その活動性は主観的な痛みや不快感の程度と相関する傾向がある
- Cingulotomyを行われた患者では、痛みを感じ続けるが、それに対する情動反応が低下することが知られている。