意識のメカニズムと麻酔薬作用を解明する-機能的脳画像法によるアプローチ-

倉田二郎: 意識のメカニズムと麻酔薬作用を解明する-機能的脳画像法によるアプローチ- 麻酔,56:S89-S98,2007

  • 感覚情報とその統合が、意識の成立に不可欠
  • 感覚情報の受容と統合は、意識が成立するための必要条件であるといえよう
  • 感覚情報が統合される過程をbinding(束ね)と、その神経科学的探求をbinding problemと呼ぶ
  • 異なる視覚要素の情報が一つに統合されて、初めて視覚という単一の感覚modalityが完成する この過程をunimodal bindingと呼ぶ
  • 異なるmodalityの感覚要素が統合される過程をmulti-modal bindingという
  • multimodal bindingは、大脳皮質感覚連合やにおいて成立すると考えられている
  • 種々の感覚要素が、脳の機能単位である複数の脳領野を経て連合野に至る過程が、意識のモデルとなりうる。
  • 機能的脳画像法でみた麻酔薬作用機序
  • 1 鎮静濃度では、大脳皮質連合野が抑制される
  • 2 意識消失濃度では、視床が抑制される
  • 3 体動抑制濃度では、視床から大脳皮質にわたり全脳が抑制される
  • なお、実際の体動抑制作用は、脊髄の運動ニューロン抑制が主に関与すると考えられる
  • 機能的脳画像法研究で得された麻酔と睡眠のメカニズムに関する知見の概説
  • 1 “意識=覚醒”のモデルは、脳における感覚要素の統合(binding)として定義可能である
  • 2 麻酔薬は、用量依存性に感覚連合野を、続いて第一次感覚野、視床を抑制する
  • 3 静脈麻酔薬、揮発性麻酔薬とおに、神経血管共役を阻害する
  • 4 γ帯域情報伝達は、麻酔薬により大脳皮質間で抑制され、視床ー大脳皮質間では比較的保たれる
  • 5 睡眠でも、麻酔と同様に、感覚連合野における抑制が観察されるが、体性感覚は第一次感覚野にも到達せず、視床以下で遮断される可能性がある