小山哲男 痛みと思い込み その鎮痛効果と脳の活動 臨床脳波 2007;49(7):407-412

  • 痛みは不快を伴う主観的な情動体験である
  • 侵害刺激による痛みに伴う脳活動は様々な文献で概ね一致しており、体性感覚野、前帯状回、島、前頭前野視床、小脳などの活動が報告されている
  • 痛みは情動体験であるため、過去の体験や、それにもとづく思い込みに大きく影響される
  • 本稿は、ヒトの主観的な痛みの強さとfMRIで評価された脳活動の関連を顧み、思い込みにより主観的な痛みが変化すること、それは大脳生理学的な裏付けを持つことを要約するものである
  • とても痛がる被検者群では、視床、さらに前帯状回、第一次体性感覚野をはじめとする皮質領域に大きな活動がみられた
  • あまり痛がらない被検者群では、視床にほぼ同等の活動が見られたが、前帯状回、第一次体性感覚野をはじめとする皮質領域に活動は小さかった
  • 痛みの個人差は大脳皮質レベルの活動の差異に大きく関連することを示している
  • 主観的な痛みの大きさと脳活動の関連を調べる実験を行うと、fMRI画像において、前帯状回の活動は主観的な痛みと一致した変化を示した。
  • 個人差のレベルでも、個人内のレベルでも、主観的な痛みの強さは脳活動と関連することが裏付けられた。
  • 心理データでは、同一の50度の熱刺激であっても、それを48度の刺激と思い込んだ場合に、実際に体験する痛みは小さくなることが示されている
  • 来るべき痛みが小さいと思い込むことは、実際の痛みの体験を小さくすること、それは痛みに関連する脳領域の活動が小さくなることに裏付けられることを示している。