- 腰痛をはじめ非癌性慢性疼痛に対する医療は、純粋に医学的な面と、患者側の社会的な面、治療者側の社会的な面が複雑に交錯しており、一部の疾患に対する確立された医療行為以外は混沌とした状態である
- 国際疼痛学会の痛みの治療にあたる施設の分類
- 日本では、いわば、modality-orientedなアプローチを基礎として発展してきた。我が国には学際的痛みセンターがないと言われるが、厳密な意味では痛みを対象にした専門の診療体系そのものがないのである
- 腰痛の治療
- trigger point注射、消炎鎮痛剤、手術、レーザー治療、硬膜外ブロック 患者にとっては何を信頼したら良いかわからない状況
- 要するに医療機関の多くが自分の特異な治療方法を説明し、他の方法については分かりませんというスタンスをとる。それぞれの治療法の欠点や利点を説明し、どの方法がいいか意見を述べ、最終的に患者が治療法を選択するという流れが望ましい。
- 痛みには「思い込み」の要素が大変大きいのだが、このことは意外にあまり知られていない。
- 痛みの専門医としての臨床経験から、痛みにとらわれている患者では柔軟な思考ができなくなり、心のゆとりが少なくなっていることに気づく。これらが痛みの原因であるか結果であるか、あるいは相互連関であるのかわかならいが、痛みが回復するとこれらは改善することが多いので、少なくとも、もっぱら原因ということはないであろう
- 将来的には、この痛みの予期のメカニズムが解明され、鎮痛に役立つような先進的な方法が開発されるかもしれないが、少なくとも今の医療においてはそのような方法はなく、患者との良好な関係を保つことが痛みの予期のメカニズムを解明する湯力な方法であることに違いないであろう。患者との良好な関係は医療者が痛みに「共感」できる心から生まれるものであろうが、その「共感」できる感情は、痛みの研究や教育によって変わり得るものであると信じたい。