ペインクリニックにおける心理社会的評価に潜む陥穽

前田倫、高橋亜矢子 ペインクリニックにおける心理社会的評価に潜む陥穽 LiSA別冊 ’19(春) 125-130

  • 49歳という年齢に関わらず、常に家族が同伴、介入していたことがある。初診に限れば稀有なことではないが、家庭を築いている成人が、未成年と同じように家族同伴で受診を継続することは、問題があることを示唆している
  • 慢性痛という症状を治療対象とするペインクリニックには、不健全で病的な情動が集積する。そして、医療者は基本的に患者の発言に共感・傾聴するよう教育を受けており、一方、痛みの治療現場では、通常、患者側は安心・信頼関係を求めている。ここに大きな陥穽(かんせい)が潜んでいる。医療者は情動を冷静に健全に管理して、慢性痛の不健全な情動に影響されないように努める必要がある。
  • 交通賠償など疾病利得を求めて患者が治療を受け続ける場合でも、倫理的に患者を疑わない教育を受けてきた医師は(ときには詐病に対しても)治療を重ねかねない。
  • このような場合には、痛みは痛みとして受容しつつも、社会的問題と治療を切り離すことを初診から説明し、説明を都度繰り返す
  • 治療は、患者の心の状態、医療者の態度に影響されることを踏まえながらも、情動に流されず医療者として、痛みの捉え方、その対処の仕方を繰り返し説明することが肝要である
  • 医学は科学であるが、痛みに治療現場で、こと慢性疼痛においてEBMのみで解決せず、NBMが必要となることは、今後諸姉諸兄が真摯に臨床に向き合えば肌で実感するであろう
  • “情動”である”痛みという症状”に、”共感”と”傾聴”という”情動”で対処するという堂々巡りのよくわからない”治療”となる