痛みと臨床6

川井康嗣 痛み診療における痛みの評価手順 痛みと臨床 2006;6(3):296-303

  • 評価する痛みは、警告としての痛みではなく、不必要な痛みである
  • 痛みには感覚としての痛みと情動体験としての痛みがあること、また、痛みのもたらす苦痛は全人的苦痛(身体的苦痛、精神的苦痛、社会的苦痛、霊的苦痛)であることを理解することがポイントである
  • 慢性疼痛では疼痛行動の評価が重要である
  • 組織や臓器の障害の程度と、痛みの程度が相関しない場合も臨床的には珍しくない
  • 痛みは組織損傷に伴う感覚、または情動的体験
  • 感覚は身体的側面を、情動体験は精神的側面を表している
  • 医療において感覚としての痛みのみが重視され、情動体験としての痛みまで含めて理解されないことが多い
  • 痛みの意味を評価する場合、むしろ情動体験としての痛みの方が重要かもしれない。
  • 医療において警告としての意味がない痛みは、不必要な痛みである
  • われわれの外来では、しばしば慢性疼痛患者に「どうしていたいと思いますか」などと問うようにしている。
  • 疼痛患者にとって、痛みの原因や程度はほぼすべて画像診断できるという誤解がある
  • 痛みが著明に改善しても満足度が低い場合や、神経ブロックに伴う随伴症状にこだわる場合は、痛み以外の因子が苦痛の原因となっている可能性を考える
  • 治療の対象は痛み行動
  • 患者に痛みと共存することを教育しながら疼痛治療を行う
  • 多箇所の痛みを訴えている場合には、ひとつなくすとしたらどの痛み?や、痛みによる苦悩を訴える患者には痛みがなくなったら何をしたいなどの問いに対する回答は、社会復帰への意志や具体的な計画を患者がもっているかどうかの情報をあたえてくれる

平川奈緒美 痛みに評価に用いる質問表 痛みと臨床 2006;6(3):304-310

  • 痛みは非常に主観的なものであり、これを客観的に評価することは困難である
  • 質問表
    • McGill pain questionnaire
    • short-form McGill questionnaire SF-MPQ
    • Brief pain inventory
    • pain and distress scale
    • 痛み日記
  • 活動性の質問表
    • Roland Morris Disability questionnaire
    • pain disability assessment scale PDAS
  • 心理的評価の質問表
    • State-trait anxiety inventory STAI
    • Illenss behavior questionnaire IBQ

田邊豊 日常診療における痛みの評価法 痛みと臨床 2006;6(3):311-315

  • 5番目のバイタルサインとして痛みが注目されている
  • 痛みは主観的なもので他の人と共有できないために、評価することは非常に難しいこととなる
  • 日常的にpain relief socreやVASがよく用いられている

松岡綋史、坂野雄二 認知行動療法3 症例をとうした理解 痛みと臨床 2006;6(3):340-343

  • 慢性疼痛 症状が維持されている要因を想定した上で治療技法を選択することが縦横である
  • 認知行動療法では痛みの原因を取り扱う際、行動、情緒、認知、環境、身体などの観点から患者を包括的に理解し、整理された諸要因を機能分析によって有機的に結びつけ、その原因に基づいて介入戦略を立てる。
  • 強い筋緊張によって痛みが生じやすくなっており、変な病気にかかっているのではないかという強い懸念によって症状が維持されている

赤居 正美 痛みに対するリハビリテーション 痛みと臨床 2007;7(1):42-47

  • 疼痛は本質的に主観的な情動体験なので、同じ障害をうけても反応が異なり、それぞれが違う疼痛を経験することになる。疼痛への耐性と感受性に個人差があることを理解した上で、治療への反応を考える必要がある。
  • 疼痛とは不快な感覚性情動性の体験であるが、身体に障害原因が常にあるとは限らない
  • 痛みの定義 1986 international association for the study of pain IASP
    • 疼痛とは不快な感覚性情動性の体験(unpleasant sensory and emotional experience)であり、実質的ないし潜在的な組織障害(actual or potential tissue damageをともないものと、そのような損傷があるように表現されるもの(described in terms of such damage)とがある
  • 疼痛の認識 転換、伝達、調節、認知
    • 転換 神経終末において、侵害受容器への刺激が電気信号に転換される
    • 伝達 電気信号が神経線維中を伝播
    • 調節 神経ネットワークの構造から、末梢から中枢にいたる段階でシグナルが調節される
    • 認知 脳における情動体験として処理される
    • ゲートコントロール理論
    • パラレルプロセッシング理論
  • 疼痛分類形式 IASP
    • 第一軸 疼痛部位
    • 第二軸 関係する器官
    • 第三軸 疼痛症状と発症形式
    • 第四軸 疼痛の強度と期間
    • 第五軸 推定病因
  • 他人の痛みの体験を分かち合うことは原理的に不可能であろうが、他人の痛みを理解しようと努力することは可能である