慢性疼痛と急性痛の間で

堺徹也 慢性疼痛と急性痛の間で LiSA別冊 ’19(春) 67-72

  • 慢性痛と考えられて経過観察されて見つかったまれな疾患
  • 閉鎖孔ヘルニア
    • すべてのヘルニアの0.05-1.4%
    • 女性は男性の9倍の発生率
    • リスクファクター るいそう、多産経験、華麗
    • ヘルニア嚢が閉鎖神経に接触すると、大腿内側音痛みや感覚低下、膝や股関節に放散する痛みが生じる(Howship-Romberg徴候(患者さんの25-50%に見られる))
    • Hannington-Kiff徴候 大腿内転筋反射の消失
    • 診断 CT (感度 90%)
    • 高齢で痩せた女性が腸閉塞症状を呈し、大腿骨版領域の非特異的な痛みを訴える場合には閉鎖孔ヘルニアを疑い、緊急CTを施行すべき
  • 閉鎖孔ヘルニアは老婦人ヘルニア(the skinny old lady hernia)とも呼ばれる
  • 難治性慢性疼痛の患者さんを相手に診療している身にとしては、痛くなったらいつでも来てくださいとはなかなか言いづらい。なぜなら、患者さんの疼痛行動を増悪させてしまう可能性があるからである。疼痛行動とは、自分のつらい痛みを周囲の人にわかってもらうために引き起こされる随意的行動であり、苦しそうな表情や足の引き釣りなどさまざまである。オペラント条件づけに基づく認知行動理論では、痛みは学習される行動であり、学習を強化するような刺激(過度の同情や優しさ)は痛み行動を強化することにつながる。よって医療者には難治性慢性疼痛の患者さんに対して中立的な立場をとることが要求される