鉄欠乏性貧血とうつ病

功刀浩 鉄欠乏性貧血とうつ病 DEPRESSION JOURNAL 2018;6(1):18-19

  • 余分な鐵は、肝臓、脾臓、骨髄などでフェリチンに貯蔵される
  • 血液中のフェリチン濃度は貯蔵鉄の量を反映し、この値が低ければ、ヘモグロビン値が正常範囲内でも「潜在性鉄欠乏」となる
  • 月経のある女性は、わが国において二人に一人が潜在性鉄欠乏であるともいわれている
  • 鉄欠乏症では、疲労、焦燥感、無関心、集中力低下など、うつ病に類似した症状が生じうることが古くから指摘されている
  • 妊娠中は胎児に栄養分をとられ、出産時に出血するために、産後に鉄欠乏になる女性が多く、これが産後うつ病のリスク因子になるという研究報告が少なくない
  • 近年、産後うつ病のみならず、鉄欠乏/貧血とうつ病ないしうつ症状との関連を示した研究結果が増えている
  • 鉄欠乏制貧血や潜在性鉄欠乏が一般人口に高頻度に存在するにもかかわらず、その大部分の人はうつ病でないことを考量すれば、鉄欠乏はうつ病のリスクを高めるにしても、それほど高い効果ではないと考えるのが妥当であろう
  • 一部の人は「鉄欠乏によってうつ症状がひきおこされやすい体質」をもっているかもしれない
  • 動物性の食品(赤身の肉、レバー、貝)に含まれるヘム鉄は比較的吸収されやすい(吸収率:25%)が、植物性食品(海藻、青菜、大豆)に含まれる非ヘム鉄は吸収されにくい(吸収率:1-7%)
  • ビタミンCは鐵の吸収を促進するので一般的に、一緒にとるとよい
  • 鉄の過剰はがん、認知症など種々の病気のリスクになるので、定期的な血液検査を行いながら補充する必要がある(ただし、食事だけで過剰になることはまずない)